改訂新版 世界大百科事典 「丹波氏」の意味・わかりやすい解説
丹波氏 (たんばうじ)
丹波国を本拠とした古代の大族。丹波地方は畿内と南で接し,丹波道が早くから開けたため,大和政権とのつながりも古くから成立したらしく,《日本書紀》開化紀に丹波之大県主の名が見え,崇神紀にも丹波道主(たにわのちぬし)命を四道将軍の一人として丹波に遣わす話がある。また垂仁紀は,道主の5人の娘が宮廷に入り,その一人皇后日葉酢(ひばす)姫の子を景行天皇とするなど,伝承は天皇系譜との親密な関係を物語る。丹波氏の成立について,《国造本紀》は丹波国造を成務朝にあてている。古代の史料に散見する丹波史(ふひと)氏は,《丹波氏系図》《新撰姓氏録》に後漢霊帝の後裔とあって,丹波で坂上姓を与えられる志拏直の孫孝日王を氏祖とする。丹波史氏は山城,近江,越前,筑後などに広がり,のち宿禰や朝臣姓に改める者も出た。10世紀以降,宮廷内では医術によって仕え,典薬寮頭や医博士を世襲する。
執筆者:梅村 喬
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報