主体思想
しゅたいしそう
北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の指導思想。チュチェ思想。金日成(キムイルソン)が創始し、金正日(キムジョンイル)が発展させたとされる。思想における主体、政治における自主、経済における自立、国防における自衛を柱とする。
北朝鮮に「主体」という概念が初めて公式に登場したのは、1955年12月の金日成の演説「思想活動において教条主義と形式主義を一掃し、主体を確立するために」においてのことだったとされる。その後1960年代後半までに、事大主義、修正主義および教条主義との長期にわたる闘争を通じて築き上げられた。「主体思想」という名称で独自化され、「唯一思想」として提示されたのは1967年ごろからであり、1972年12月制定の社会主義憲法に盛り込まれた。1980年の朝鮮労働党第6回大会では、全社会の主体思想化という課題が公式に打ち出された。外国での普及も図られた。
2019年4月の改正で、より広義の「金日成・金正日主義」にかわるまで、憲法では「指導的指針」として明文化されていた。金日成の死去から3年後の1997年には、金日成の生年である1912年を元年とした「主体年号」も導入された。
[礒﨑敦仁 2020年2月17日]
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主体思想(チュチェしそう)
朝鮮労働党の指導思想。北朝鮮に「主体」(チュチェ)という政治概念が初めて登場したのは,1955年12月の金日成(キム・イルソン)演説である。その後,67年までに,事大主義,教条主義,修正主義との闘争をへて,この概念は「思想における主体,政治における自主,経済における自立,国防における自衛」という四つの路線に集約され,「唯一思想」として提示された。70年の労働党第5回大会では,その確立が宣言された。さらに80年の第6回大会では,全社会を主体思想化するという課題が提示された。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
知恵蔵
「主体思想」の解説
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主体思想
チュチェしそう
1970年代初めから提唱された,自力更正をめざす朝鮮労働党の指導思想
朝鮮労働党は,朝鮮民主主義人民共和国で一党独裁体制をとる指導政党。政治における自主,経済における自立,国防における自衛を柱とした。
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世界大百科事典(旧版)内の主体思想の言及
【自力更生】より
…
[中国]
現代中国のスローガン。もともと抗日戦争を勝ちぬくために使われた。1941年,日本は中国の主要な港を占領し,つづいて,唯一残された英米の対中国援助のビルマ~昆明ルートを脅かした。このため,国民党内のみならず共産党内部にも抗日戦の行方について悲観論が出はじめた。このような状況下で,毛沢東は自力更生を主とし,そのうえで外国に頼るというスローガンを提唱した。新中国が成立し,経済建設期に入った中国は当初ソ連に依存したが,60年7月,ソ連は経済・技術協定を破棄した。…
【チュチェ思想】より
…[金日成](きんにつせい)の名のもとに唱道されている朝鮮民主主義人民共和国の思想原理。[自力更生]論をいっそう包括的な哲学体系に発展させて,1960年代後半以降チュチェ(主体)思想と呼ぶようになった。当初は,〈思想における主体,政治における自主,経済における自立,国防における自衛〉(金日成,1965)というように,国際共産主義運動の多極化状況に対する独自の視点を強調する面が強く,マルクス=レーニン主義の一般的真理を自国の歴史的条件に創造的・自主的に適用する立場と説明されていた。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」