二クロム酸ナトリウム(読み)ニクロムサンナトリウム

デジタル大辞泉 「二クロム酸ナトリウム」の意味・読み・例文・類語

にクロムさん‐ナトリウム【二クロム酸ナトリウム】

水和物吸湿性のある橙赤色の結晶。化学的性質二クロム酸カリウムによく似る。皮なめし剤・媒染剤などに利用化学式Na2Cr2O7 重クロム酸ナトリウム

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化学辞典 第2版 「二クロム酸ナトリウム」の解説

二クロム酸ナトリウム
ニクロムサンナトリウム
sodium dichromate

Na2Cr2O7(261.97).IUPAC体系名はヘプタオキシド二クロム酸ナトリウム.工業的には,クロム鉄鉱(chromite)FeCr2O4,石灰,Na2CO3の粉末混合物をばい焼後,水で抽出し,酸を加えて濃縮し,二水和物の結晶を析出させる.そのほか,CrO3をNa2CO3で中和するか,Na2CrO4水溶液を酸性にした後,濃縮析出させる製法もある.二水和物は赤橙色の単斜晶系結晶.約85 ℃ で無水塩になる.室温で安定な無水塩はβ相で,三斜晶系のイオン結晶.2個の四面体型のCrO4が1個のO原子を共有して結合したCr2O72-をもつ.Cr-O1.61 Å(末端),1.78 Å(架橋).∠Cr-O-Cr131°.240 ℃ 以上でα相(三斜晶系)にかわる.融点356.7 ℃.400 ℃ 以上で分解して O2 を放出する.強力な酸化剤.水に易溶(20 ℃ で273 g/100 g).水溶液は弱酸性(1% 液の pH 約4.0)である.各種の二クロム酸塩,クロム酸塩,クロム化合物の原料,皮なめし,媒染剤,有機合成などでの酸化剤,さび止め処理,木材の防腐油脂の漂白処理などに利用される.六価クロム化合物として化学物質排出把握管理促進法・特定1種指定.毒劇法では重クロム酸塩として劇物指定.労働安全衛生法・名称等を通知すべき危険物及び有害物指定.[CAS 10588-01-9]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「二クロム酸ナトリウム」の意味・わかりやすい解説

二クロム酸ナトリウム
にクロムさんナトリウム
sodium dichromate

重クロム酸ナトリウムともいう。化学式 Na2Cr2O7 。赤ないし橙色のいくぶん潮解性のある結晶。普通は2水和物,比重 2.52。加熱すると 85℃で無水物となる。無水物の融点 356℃。水に易溶,アルコールに不溶。水溶液は微酸性を呈する。有機合成における酸化剤,皮なめし,蓄電池,油脂の脱色,石油精製,クロム酸などのクロム化合物の製造,クロム顔料,腐食防止ペイント,金属表面処理,媒染剤などに用いられる。

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世界大百科事典(旧版)内の二クロム酸ナトリウムの言及

【二クロム酸】より

…酸化クロム(VI) CrO3水溶液を計算量の濃アンモニア水で中和し,濃縮して冷却すると得られる。二クロム酸ナトリウムと硫酸アンモニウムとの複分解によってもつくられる。橙赤色の単斜晶系柱状ないし板状晶。…

※「二クロム酸ナトリウム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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