改訂新版 世界大百科事典 「二倍織物」の意味・わかりやすい解説
二倍織物 (ふたえおりもの)
二重織物,二陪織物とも書く。紋織物の一種で,特に有職(ゆうそく)織物として知られる。一般に地紋のある綾地に,別の彩糸で浮文を縫取織にしたものをいう。すなわち地文様の上に絵緯(えぬき)による上文(うわもん)が重なることから,二重(陪)織物の名称が生まれたといわれている。浮織物をさらに華やかにした感じのもので,主として童直衣(わらわのうし)の指貫(さしぬき),女房装束の唐衣(からぎぬ),表着(うわぎ),小袿(こうちき)(袿)などに用いられた。遺品では,鶴岡八幡宮蔵の白小葵地鳳凰文袿(国宝。鎌倉時代),熊野速玉大社蔵の萌黄地小葵浮線綾丸文袙(もえぎじこあおいふせんりようまるもんあこめ)(室町時代)などが古い作例として知られる。江戸時代には一般に亀甲の地紋に浮線綾の丸文を上文としたものが多く,文様も定形化したようである。
執筆者:小笠原 小枝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報