改訂新版 世界大百科事典 「亜塩素酸」の意味・わかりやすい解説
亜塩素酸 (あえんそさん)
chlorous acid
化学式HClO2で示される化合物であるが,単離されず,水溶液中でのみ存在する。二酸化塩素ClO2を水に溶かすと,塩素酸とともに生成する。
2ClO2+H2O─→HClO2+HClO3
また亜塩素酸バリウム水溶液に希硫酸を加えると無色のHClO2水溶液が得られる。
Ba(ClO2)2+H2SO4─→2HClO2+BaSO4↓
水溶液は室温で容易に二酸化塩素と塩素とに分解し,黄色になる。酸化性が強く,酸性も比較的強い。
亜塩素酸塩
亜塩素酸の水素が金属で置換されて生じる塩の総称。クロライトchloriteともいう。一般式MIClO2。二酸化塩素の溶液に金属過酸化物MI2O2を加えると得られる。
2ClO2+MI2O2─→2MIClO2+O2
また,銀,鉛,水銀などの難溶性塩は,亜塩素酸ナトリウムとこれらの金属の可溶性塩との複分解によってつくられる。加熱や衝撃によって爆発する。とくに重金属の塩はこの傾向が著しい。亜塩素酸ナトリウムは,水によく溶け,酸を加えると分解して二酸化塩素を生じて漂白性を示すので,一部の食品(オウトウ,フキ,ブドウ,モモ)の漂白などに用いられる。
執筆者:大瀧 仁志
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報