化学式HClO3。水溶液としてのみ存在する強酸で,不純物を含んでいたり光が当たると分解するが,純粋の状態では無色の安定な溶液で,減圧濃縮することができる。40%以上の濃厚な溶液になると分解して塩素と酸素を生じ塩酸となる。塩素酸バリウムBa(ClO3)2に硫酸を作用させて硫酸バリウムを沈殿させるか,塩素酸カリウムKClO3と硫酸アルミニウムの混合溶液に硫酸を加えてミョウバンを結晶として除けば,水溶液中に塩素酸が残る。濃厚な水溶液は刺激臭がある。強力な酸化剤で多くの金属と反応し塩素酸塩を生ずるが,アルミニウムでは定量的に塩化物にまで還元される。硫黄,セレン,ヒ素を酸化し,それぞれ硫酸,セレン酸,亜ヒ酸およびヒ酸を生ずる。ハロゲン化水素からはハロゲンが生ずる。有機化合物とは爆発的に反応する。塩素酸塩としては,塩素酸カリウムおよび塩素酸ナトリウムNaClO3(過塩素酸塩製造原料,除草剤などに利用される)が重要である。
執筆者:大瀧 仁志
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
塩素のオキソ酸の一つで、強い一塩基酸。水溶液中にだけ存在する。化学式HClO3、式量84.46。塩素酸バリウムの水溶液に硫酸を加え、硫酸バリウムの沈殿を除いてつくる。減圧濃縮すると約40%の濃溶液が得られる。濃溶液は硝酸のような刺激臭をもっている。40%以上の濃溶液は、分解して塩素と酸素を発生する。塩酸との混合物は王水に似ている。金属とその酸化物、水酸化物、炭酸塩の多くは、溶けて塩素酸塩となる。硫黄(いおう)、臭素、ヨウ素はそれぞれ硫酸、臭素酸、ヨウ素酸に酸化される。オゾンや過酸化水素に酸化されて、過塩素酸HClO4となる。きわめて強い酸化剤で、濃溶液は有機物に触れると爆発するので、取扱いに注意を要する。
[守永健一・中原勝儼]
HClO3(84.46).塩素酸バリウムに硫酸を作用させてつくる.水溶液としてのみ知られ,光を当てなければ安定である.水溶液は無色で,40% 以上の濃厚水溶液は分解して塩素と酸素を生じる.強酸で希薄水溶液ではほとんど完全に電離しており,安定で沸点まで熱しても分解しない.強力な酸化剤である.多くの金属は水素を発生して溶解し,塩素酸塩を生じる.硫黄,セレンなどは酸化されて,それぞれ硫酸,セレン酸になる.有機物とは爆発的に反応する.オゾン,過酸化水素により酸化されて過塩素酸となる.化学試薬,塩素酸塩の製造,酸化剤などに用いられる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加