水酸化バリウム(読み)スイサンカバリウム(その他表記)barium hydroxide

デジタル大辞泉 「水酸化バリウム」の意味・読み・例文・類語

すいさんか‐バリウム〔スイサンクワ‐〕【水酸化バリウム】

酸化バリウム水中に投じて得られる白色粉末水溶液バリタ水といい、強アルカリ性で、二酸化炭素を吸収すると炭酸バリウムの白色沈殿を生じる。分析用試薬・バリウム石鹸製造有機合成などに利用化学式Ba(OH2

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精選版 日本国語大辞典 「水酸化バリウム」の意味・読み・例文・類語

すいさんか‐バリウムスイサンクヮ‥【水酸化バリウム】

  1. 〘 名詞 〙 ( バリウムは[英語] barium ) バリウムの水酸化物。化学式 Ba(OH)2 または Ba(OH)2・8H2O 無色正方晶系結晶潮解性で水に溶けやすい。有毒。水溶液は強アルカリ性を示し、バリタ水と呼ばれ、中和滴定のアルカリ標準液、二酸化炭素の定量などに用いるほか、バリウム石鹸の製造、有機合成などにも用いる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「水酸化バリウム」の意味・わかりやすい解説

水酸化バリウム
すいさんかばりうむ
barium hydroxide

バリウムの水酸化物。

 炭酸バリウムを熱分解して得た酸化バリウムを温水に溶解し、冷却することによって製造される。塩化バリウムと水酸化ナトリウムの複分解による方法もある。

  BaCl2+2NaOH―→Ba(OH)2+2NaCl
水溶液から析出したものは八水和物で、空気中で風解する。真空乾燥で一水和物に、550℃の加熱で無水和物となる。アルカリ土類水酸化物のなかで水に対する溶解度がもっとも高く、また、水溶液のアルカリ性ももっとも強い。エタノールエチルアルコール)にはわずかに溶けるが、エーテルには溶けない。水溶液はバリタ水とよばれ、炭酸ガスを吸収すると炭酸バリウムの白色沈殿を生ずる。

  Ba(OH)2+CO2―→BaCO3+H2O
この反応はきわめて鋭敏で、炭酸ガスの検出に用いられる。バリタ水はこのほか中和滴定の標準液として分析上重要である。水酸化バリウムは、バリウムせっけんグリース、塩化ビニル安定剤用)、その他のバリウム化合物の製造原料、硫酸の中和除去剤など工業的需要が大きい。ほかのバリウム塩同様有毒で、吸入した場合はうがい、皮膚や目についた場合は流水で十分洗う必要がある。

[鳥居泰男]


水酸化バリウム(データノート2)
すいさんかばりうむでーたのーと

水酸化バリウム八水和物
  Ba(OH)2・8H2O
 式量  315.5
 融点  78℃
 沸点  ―
 比重  2.188(測定温度18℃)
 結晶系 正方
 屈折率 (n) 1.5017
 溶解度 4.181g/100g(水25℃)


水酸化バリウム(データノート1)
すいさんかばりうむでーたのーと

水酸化バリウム
  Ba(OH)2
 式量  171.3
 融点  325℃(水素気流中)
 沸点  ―
 比重  4.495
 結晶系 単斜(冷却)
 溶解度 3.84g/100g(水20℃)
     101.4g/100g(水100℃)

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改訂新版 世界大百科事典 「水酸化バリウム」の意味・わかりやすい解説

水酸化バリウム (すいさんかバリウム)
barium hydroxide

化学式Ba(OH)2。酸化バリウムと水との反応で生ずるが,硝酸バリウムと水酸化ナトリウムの水溶液を熱しながら反応させて冷却すると8水和物Ba(OH)2・8H2Oが得られる。無水和物を水から再結晶しても,同じ8水和物となる。無水和物は白色の無定形の粉末で,比重4.49,融点325℃(水素気流中)。融解物を冷却すると,単斜晶系の結晶にもなる。他のアルカリ土類金属の水酸化物よりも水に溶けやすく,BaOとしての溶解度は3.84g/100g(20℃)。強熱すると約1000℃で分解し,酸化バリウムとなる。8水和物は無色,正方晶系の結晶で,比重2.18。78℃で自分の結晶水に溶けた液体となる。水溶液は強アルカリ性で,重土水またはバリタ水とも呼ばれ,中和滴定の際のアルカリ標準液として用いられる。また二酸化炭素や炭酸イオンと反応して炭酸バリウムの難溶性沈殿を生ずるので,それらの分析にも利用される。
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化学辞典 第2版 「水酸化バリウム」の解説

水酸化バリウム
スイサンカバリウム
barium hydroxide

Ba(OH)2(171.35).酸化バリウムと水との反応,または水酸化ナトリウムと硝酸バリウムとの反応により水溶液から八水和物が得られる.八水和物は無色の単斜晶系結晶.密度2.18 g cm-3.融点78 ℃.水に易溶,エタノールに不溶.無水物は融解液から単斜晶系結晶として得られる.密度4.49 g cm-3.408 ℃ で分解して酸化バリウムとなる.水100 g に対する溶解度は3.74 g(20 ℃),50.35 g(80 ℃).エタノールに微溶.水溶液は強アルカリ性を示し,バリタ水とよばれ,中和滴定のアルカリ標準液に用いられる.二酸化炭素や炭酸塩と反応して炭酸バリウムの沈殿を生じるのでこれらの定量に用いられる.せっけん(脂肪のけん化剤),触媒,潤滑油,耐熱グリース,樹脂安定剤,ガラスの製造,精糖,硫酸イオンの除去剤,ケイ酸塩の融解などに用いられる.有毒.[CAS 17194-00-2:Ba(OH)2][CAS 12230-71-6:Ba(OH)2・8H2O]

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百科事典マイペディア 「水酸化バリウム」の意味・わかりやすい解説

水酸化バリウム【すいさんかバリウム】

化学式はBa(OH)2。比重4.49,融点325℃(水素気流中)。酸化バリウムと水の反応で得られる無色無定形粉末。水にかなり溶け,飽和水溶液から再結晶すると,無色の8水和物が析出する。これは比重2.164,78℃で結晶水に溶け,550℃で無水物となる。水溶液はバリタ水とも呼ばれ強いアルカリ性を示し,中和滴定の標準液。
→関連項目バリタ水

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「水酸化バリウム」の意味・わかりやすい解説

水酸化バリウム
すいさんかバリウム
barium hydroxide

化学式 Ba(OH)2 。通常の乾燥水酸化バリウム中には 92~95%の1水和物が含まれている。水溶液からは8水和物の無色結晶が得られる。強アルカリ性。空気中から二酸化炭素を吸収して炭酸バリウムとなる。有毒。 78℃で結晶水に溶ける。水,メチルアルコールに易溶。ガラスの製造,油脂の鹸化,油の精製,水の軟化,製糖,分析試薬に用いられる。

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