日本大百科全書(ニッポニカ) 「水酸化バリウム」の意味・わかりやすい解説
水酸化バリウム
すいさんかばりうむ
barium hydroxide
バリウムの水酸化物。
炭酸バリウムを熱分解して得た酸化バリウムを温水に溶解し、冷却することによって製造される。塩化バリウムと水酸化ナトリウムの複分解による方法もある。
BaCl2+2NaOH―→Ba(OH)2+2NaCl
水溶液から析出したものは八水和物で、空気中で風解する。真空乾燥で一水和物に、550℃の加熱で無水和物となる。アルカリ土類水酸化物のなかで水に対する溶解度がもっとも高く、また、水溶液のアルカリ性ももっとも強い。エタノール(エチルアルコール)にはわずかに溶けるが、エーテルには溶けない。水溶液はバリタ水とよばれ、炭酸ガスを吸収すると炭酸バリウムの白色沈殿を生ずる。
Ba(OH)2+CO2―→BaCO3+H2O
この反応はきわめて鋭敏で、炭酸ガスの検出に用いられる。バリタ水はこのほか中和滴定の標準液として分析上重要である。水酸化バリウムは、バリウムせっけん(グリース、塩化ビニル安定剤用)、その他のバリウム化合物の製造原料、硫酸の中和除去剤など工業的需要が大きい。ほかのバリウム塩同様有毒で、吸入した場合はうがい、皮膚や目についた場合は流水で十分洗う必要がある。
[鳥居泰男]
水酸化バリウム(データノート2)
すいさんかばりうむでーたのーと
水酸化バリウム八水和物
Ba(OH)2・8H2O
式量 315.5
融点 78℃
沸点 ―
比重 2.188(測定温度18℃)
結晶系 正方
屈折率 (n) 1.5017
溶解度 4.181g/100g(水25℃)
水酸化バリウム(データノート1)
すいさんかばりうむでーたのーと
水酸化バリウム
Ba(OH)2
式量 171.3
融点 325℃(水素気流中)
沸点 ―
比重 4.495
結晶系 単斜(冷却)
溶解度 3.84g/100g(水20℃)
101.4g/100g(水100℃)