日本大百科全書(ニッポニカ) 「亜鉛くじゃく石」の意味・わかりやすい解説
亜鉛くじゃく石
あえんくじゃくいし
rosasite
くじゃく石の部分亜鉛置換体。化学組成式で正確に示すと、Cu(Zn,Cu)[(OH)2|CO3]となり、つねにCu(銅)>Zn(亜鉛)であり、くじゃく石との間には結晶学的不連続部分が存在するとされる。ただ、結晶系について、これまで知られている単斜相のほかに三斜相の存在も暗示されているが、完全記載には至っていない。自形はc軸方向に伸びた針状で、これが放射状集合あるいは皮膜状集合を構成する。各種熱水鉱脈型あるいは接触交代銅・亜鉛鉱床の酸化帯に産し、黄銅鉱や閃(せん)亜鉛鉱など硫化物の初生鉱物をほとんど伴わないことから、原鉱物が銅・亜鉛の二次鉱物である可能性も示唆されている。日本では静岡県下田(しもだ)市河津(かわづ)鉱山(閉山)産のくじゃく石とされているもののなかで、色が淡青緑色のものがこれに該当するという。
共存鉱物は水亜鉛銅鉱、菱(りょう)亜鉛鉱、白鉛鉱、水亜鉛土、異極鉱、くじゃく石、石英、方解石など。同定はくじゃく石より青色味のある淡緑色のものが多いことで、くじゃく石と識別できることがある。酸で発泡して分解する。条痕(じょうこん)は、くじゃく石のそれと比較すると色が原色調ではない。命名は原産地イタリア、サルデーニャ島ロザスRosas鉱山(閉山)に由来する。
[加藤 昭 2015年12月14日]