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人工臓器 じんこうぞうきartificial organ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

人工臓器
じんこうぞうき
artificial organ

生体の臓器や組織の機能や形を代行できる人工的装置をいう。実用化されているものとしては,人工腎臓人工心肺人工血管,人工弁,心臓ペースメーカー人工骨頭,人工関節,人工腱,人工角膜,人工血漿などがあり,そのほか人工肝臓,人工膵臓人工心臓,人工感覚器,人工血液なども研究されている。すぐれた高分子や金属,無機材料,電子工学,装置工学などの進歩によって,生体との適合性のよりよい人工臓器が開発されつつあり,人工臓器と共存して生命を維持している人の数が次第に多くなっている。薬剤療法,手術,物理療法などと並んで,人工臓器治療は重要な治療法の一つとなっている。

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知恵蔵の解説

人工臓器

様々な生体適合材料を用いて人工的に作製した臓器。人工血管、人工皮膚、人工骨、人工関節などが既に治療に使われている。埋め込み型の人工心臓、人工膵臓などは開発中。人工臓器で最も重要なのは、いかに生体になじむか(生体適合性)と、生体に近い機能を発揮するかである。

(今西二郎 京都府立医科大学大学院教授 / 2007年)

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デジタル大辞泉の解説

じんこう‐ぞうき〔‐ザウキ〕【人工臓器】

人工材料を用いた、生体の臓器の機能を代行させる装置。人工心肺・人工腎臓など。

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百科事典マイペディアの解説

人工臓器【じんこうぞうき】

人工的に製作された代用臓器。生体の一部が欠損したり,その機能が低下したとき,または手術の必要上一時的にある臓器の血流を遮断(しゃだん)するときに用いる。体内に移植される人工臓器の材質は,化学的に安定で,生体に無害で,消毒に耐えるなどの条件が必要であり,フッ素樹脂,ポリエチレンテレフタレート,シリコーン,メタクリル樹脂などのプラスチックテフロンなどをおもに用いる。
→関連項目外科生体適合材料

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世界大百科事典 第2版の解説

じんこうぞうき【人工臓器 artificial organ】

生体の臓器組織の代用として人工的につくられた製品。人工臓器には通例,人工的な組織も含まれる。
【臓器移植と人工臓器】
 人間を含め動物には生まれた時から,傷ついた組織を治癒しようとする力が備わっている。医学はこの自然治癒力に依存してきたといえる。温熱療法のような物理的方法にしても,薬剤などによる化学的方法にしても,生体がもっているこの治癒力を刺激し,促進するにすぎなかった。したがって,もし生体の臓器の内部に回復しようとする生命力が残されていなければ,その医学療法は効果がなかったのである。

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大辞林 第三版の解説

じんこうぞうき【人工臓器】

生体の臓器の代用となるように作られた人工装置。人工心肺・人工腎臓など。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

人工臓器
じんこうぞうき

生体の臓器、あるいは組織の代行を目的として人工的につくられた装置の総称。疾病や損傷によって機能を失い、絶望的になった臓器を他の生体の臓器、あるいは人工の機械で置き換えることによって根本的な治療を行う方法を置換外科という。置換外科のうち、生体の臓器を活用するのが臓器移植であり、人工の機械を用いるのが人工臓器である。
 臓器移植が成功すれば、その供給された臓器は体内において生着し、機能もほぼ完全である。しかも、患者の生活状態は生理的で、行動は自由となり、人工臓器に比して比較にならないほど快適かつ有利である。しかし、臓器移植には臓器の入手、臓器の保存、あるいは提供者の死の判定など、医学的および社会的に解決すべき多くの問題があり、これまで人体の重要なる臓器の移植においては、腎臓(じんぞう)移植(死体からの腎臓摘出)が法律的に認められているだけであった。しかし、1997年(平成9)7月に、脳死者からの臓器移植を可能とする法律「臓器の移植に関する法律(臓器移植法)」が成立し、脳死臓器移植の道が開かれた。1999年2月28日に、日本において臓器移植法施行後、最初の脳死の患者をドナーとする心臓移植が大阪大学において行われた。次いで1999年5月および6月に、同じく心臓移植が国立循環器病センターにおいて行われ、3例とも無事成功している。その後、心臓移植は20例行われ、5年生存率は90%と外国に比して高い。なお、日本では、独自のものとして、家族のドナーによる生体部分肝移植が2006年末までに約4300回行われている。臓器移植と人工臓器とは共存の関係にある。もし腎臓移植が失敗しても人工腎臓で次のドナーを待つことができる。前記の心臓移植例においても、体内に補助人工心臓が植え込まれ、心臓機能が維持されていた。
 臓器移植の道が開かれたとはいえ、日本では脳死臓器移植を受け入れられない人は少なくなく、さまざまな社会的問題は残っている。この傾向は、欧米とは社会通念が異なる日本および東洋諸国においてとくに強い。臓器移植に対し、もし、理想的な人工臓器が開発されれば、こうした社会的問題は解決されるばかりでなく、大量生産も、長期保存も可能となり、いつでも、どこでも、だれでも使用できることとなる。このように、人工臓器は臓器移植にはない多くの利点を有している。生体の臓器と同じような完全な機能を有し、小型で、しかも長期の使用に耐え、生体内に内蔵しうるような人工臓器をつくりあげることは技術的にもけっして容易ではないが、その努力が進められている。[渥美和彦]

人工臓器の分類と研究開発のプロセス

現在、人工臓器は脳、胃および内分泌器官を除いたほとんどすべての分野において研究がなされている。医療においては、人間の存在の主体である脳を人工的につくり、置き換える必要性はないし、内分泌器官はホルモン剤の投与によって代行することができる。次に現在開発されている、おもな人工臓器をあげる。
 人工皮膚、人工頭蓋(とうがい)、人工硬膜、人工眼球、人工視覚、人工耳、人工聴覚、人工鼻、人工骨、人工関節、人工腱(けん)、人工筋肉、人工血管、人工心肺、人工肺、人工気管、人工食道、人工弁、人工心臓、人工(心臓)ペースメーカー、人工肝臓、人工胆管、人工腸、人工膵臓(すいぞう)、人工腎臓、人工尿管、人工膀胱(ぼうこう)、人工尿道、人工卵管、人工子宮、人工血液、人工手、人工足。
 完全なる人工臓器とは、生体の臓器の完全なる代行物のことをいう。すなわち、解剖学的にも生体の臓器と同じ位置にあり、同じくらいの大きさで、しかも目的の臓器の機能を完全に代行しうるものである。しかし、これらの条件を完全に満足させることは不可能である。このため、人工臓器の研究は、臓器の機能の代行を主たる目的として、その臓器の大きさや形状、あるいは存在する位置にとらわれないで、臓器モデルをつくることから始められた。研究開発のプロセスは、次のようなものである。研究当初は、まず対象とする臓器の機能の一部を短期的に代行するものから、さらに改善が加えられ、その機能を完全に長期的に代行するものがつくりあげられる。やがて、その人工臓器の機能がテストされ、動物実験が行われ、臨床に応用されていく。そしてさらに、その人工臓器を小型化し、携帯化し、最終的には体内に内蔵しうるようなものに完成していくことになる。[渥美和彦]

人工臓器の新しい展開


人工臓器の技術革新

(1)人工臓器の長期的利用 1950年代の人工腎臓は、急性の腎不全の患者に対して数回の人工透析が行われるだけであったが、現在では数年から20年にわたる長期の慢性透析が可能になってきている。一方、人工心臓においても研究当初の1960年代の初めでは、動物実験における数時間の生存がやっとであったが、1980年代に入って1年を超える生存が可能になり、半永久的利用を目的とした完全人工心臓の臨床応用が試みられるようになっており、世界で完全人工心臓の臨床例が約80例ある。
(2)人工臓器の機能の完全代行 従来の人工腎臓は単なる透析により血液中の老廃物や毒物の一部を排除するにすぎなかった。ところが1998年ごろから、生体の腎臓がもっている濾過(ろか)あるいは分泌のメカニズムをまねしようとする研究が進められている。また、人工心臓においては、生体の心臓に生理的により近い自動調節、あるいは制御機構の検討が行われているほか、人工肝臓においては、肝細胞の培養、あるいは酵素の固定化による代謝性バイオリアクター(生体の代謝機能を代行することを目的とする人工反応器)の研究も進められている。このようにみると、今後の人工臓器は機能の代行の完全化により、いかにして生体の臓器に近づけることができるかの方向に進みつつあるといえる。
(3)人工臓器の小型化 現在の人工心臓は、血液ポンプのみを体内に植え込むか、あるいは体壁に装着し、これを動かすのに必要な空気圧駆動、計測、制御あるいはエネルギー源などの装置は大きいために体外に置かれている。しかし、将来の目標は、これらのもろもろの装置をエネルギー源まで含めたシステムとして体内に植え込む内蔵型完全人工心臓の開発であり、現在もこれに向けての研究が進められている。
 人工腎臓も、濾過膜やホローファイバー(中空繊維)、あるいは吸着剤の開発、マイクロカプセルや固定化酵素などの研究により、小型化への研究が進められている。すでに人工腎臓の携帯化は実用段階に入り、さらに身体装着型が試みられているが、最終的には体内への内蔵化が考えられており、その基礎的研究も進められている。[渥美和彦]
非救命的人工臓器の開発
従来の人工臓器は、人工血管にしても人工弁にしても、あるいは人工腎臓にしても、いわば患者の生死に直接関連する一次的重要臓器の人工化であった。つまり、これらの人工臓器がないと患者の生存は望めなかったわけである。そうした意味で、これまでの人工臓器の最大の目標は、臓器の救命治療であったといえる。しかし、1980年ごろから、人工視覚や人工聴覚などの人工感覚装置のほか、人工膵臓、人工膀胱あるいは人工腕などというように、多分野における人工臓器の研究開発が進められている。これらは直接的には人間の生死には関係しないが、存在すれば好ましいものと考えられるものである。[渥美和彦]
人工臓器技術の新しい展開
人工腎臓における濾過法では、その濾過膜の孔径を大きくすることにより、血液を通して血漿(けっしょう)を濾過することができる。この技術を用いると、血漿中に含まれる免疫複合体などを除去することが可能となる。これを利用したのが、血漿交換法とよばれる、難病への新しい治療法である。研究の当初においては他人の血漿を補給していたが、1980年ごろから、目標の物質を除去したのち、その患者の血漿をそのまま患者に返すことができるようになっている。すなわち、人工腎臓の濾過法から血漿交換法への新しい展開が行われたわけである。[渥美和彦]
医学的方法論への発展
人工臓器は生体臓器の機能をまねし、代行するものであるので、その追究は生体臓器の本質的機能の解明に役だつことはいうまでもない。つまり、生体臓器とそのモデルである人工臓器との差を分析し、それを縮小することによって、その対象臓器の生体機能が明らかになってくるわけである。たとえば、人工心臓の研究を通して、なぜ心臓に拍動流が必要であるかということや、循環系における血流や血圧の調整メカニズムの意義などがわかってきているし、人工腎臓や人工肝臓の研究により、尿毒症や肝性昏睡(こんすい)の原因物質が解明されてきている。さらに人工膵臓により血糖調節の機構が理解され、人工手や人工足により人体の運動の解析が行われるなど、多くの例をあげることができる。こうした人工臓器の研究がもつ方法論は、従来とはまったく異なる新しい方法であるがゆえに、今後の基礎医学の発展への飛躍的な貢献が期待される。[渥美和彦]
人工臓器のソーシャル・アセスメント(社会的評価)
人工臓器の利用が専門研究者に限られていたときは、医学的および技術的問題のみが課題であった。しかし、その利用が広く普及するにつれて、社会的諸問題が発生するようになった。たとえば、人工腎臓の長期利用の際の経済的問題、人工心臓の臨床応用の際の倫理的問題、ペースメーカーや人工膵臓などの普及化に伴う信頼性、安全性などの法的問題などである。1969年にアメリカ国立衛生研究所は、人工臓器の臨床応用に関する社会的諸問題の検討を行った。社会的諸問題とは、生物学的、精神的、社会的、倫理的、法律的、経済的および管理的というように各分野の側面を取り上げたものである。これらの検討内容をみると、人工臓器による自然淘汰(とうた)への反逆、機械に依存して生きる人間の問題、肉体的精神的苦悩、人間の権利、生活の質の維持、人工臓器の評価、臨床応用のストラテジー(方法論)、医療資源の有効配分など、現代医療が当面する諸問題をすべて浮き彫りにしており、40年が経過した今日においてもきわめて興味深いものがある。[渥美和彦]
『日本人工臓器学会編『人工臓器は、いま――暮らしのなかにある最先端医療の姿』(2007・はる書房) ▽同編『人工臓器イラストレイティッド』(2008・はる書房)』

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世界大百科事典内の人工臓器の言及

【外科】より

…ことに人工体外受精(試験管ベビー)は,臓器移植とともに,医学を超えた大きな社会問題である。また機械工学,電子工学,高分子科学のめざましい発達はME(医用工学)を駆使する人工臓器への夢をかきたてる。古くなった臓器の機能を新しいもので代行させる時代がくるかもしれない。…

【手術】より

… 病める人々の生命を救い,苦痛から救うために絶対に必要な手術を行うために,生体に合法的にメスを加えることが許されている外科医と社会とのつながりは,なにも臓器移植の場合に限らず,きわめて深いものであり,医師の行動はすべて病める人々を通して,社会の福祉と直結し,それに還元すべきものである。 病巣を取り除くことを主体とした今日までの外科から再建を主体とした明日の外科へ飛躍するためのもう一つの手段として,人工臓器がある。外科医が今日考えている人工臓器は,心臓なり肺なり個々の臓器の機能が廃絶したとき,その代用となる小型のものである。…

※「人工臓器」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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