人民協定(読み)じんみんきょうてい(英語表記)Agreement of the People

日本大百科全書(ニッポニカ) 「人民協定」の意味・わかりやすい解説

人民協定
じんみんきょうてい
Agreement of the People

イギリスピューリタン革命において、軍会議に提出された憲法草案。1647年、アイアトンら軍幹部が国王に提案した「提案要綱」Heads of Proposalsに対して、レベラーズ水平派平等派)の影響下にあった兵士代表が、パトニーPutneyで開かれた討論の場にこれを提出した。契約思想に基づく男子成人普通選挙権、2年制の議会信仰の自由、法のもとの平等など、「提案要綱」よりも民主主義的な内容を含み、これをめぐって軍幹部と兵士代表との間で激しい論戦が戦わされた。結局討論の決着はつかず、軍幹部は内容を骨抜きにして、1649年、第二次人民協定をつくり、ランプ議会残部議会)に提出したが、なんら影響力を及ぼすことなく終わった。しかし最初の協定は、イギリス革命の到達した思想的水準を示すものとして近年高く評価されている。(書籍版 1986年)
小泉 徹]

『川村大膳著『人民協約の研究』(1962・弘文堂)』

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百科事典マイペディア 「人民協定」の意味・わかりやすい解説

人民協定【じんみんきょうてい】

ピューリタン革命期にレベラーズ(水平派)が発表した成文憲法草案。1647年の第1次協定は君主制否認,議会による最高権力の掌握,および議会といえども侵すことのできない個人の基本的諸権利を宣言。1649年これを改訂した第2次協定が議会に提出され,ピューリタン革命は最高潮に達し,その中で英国王チャールズ1世の処刑,共和国宣言などが行われた。
→関連項目パトニ討論

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「人民協定」の意味・わかりやすい解説

人民協定
じんみんきょうてい
Agreement of the People

イギリスの清教徒革命中に,平等派によって提案された政治改革案。 1647年 10月 28日パトニー討論に提出された。内容的には,住民数に基づく選挙区,2年ごとの議会,信仰の自由,法律上の平等,軍隊勤務の非強制などを含む。同年 H.アイアトンらが起草した独立派の政治改革案「提案要綱」よりさらに急進的で,49年1月軍隊はこれを修正して議会に提出したが,立法化されなかった。

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世界大百科事典(旧版)内の人民協定の言及

【ピューリタン革命】より

…この軍隊の危機に際して一般兵士層の利害を守るために登場したのが,〈レベラーズ(平等派)〉であった。47年秋レベラーズは,人民主権の共和国の構想をもつ憲法草案〈人民協定〉を提出し,独立派軍幹部に批判を加え革命の徹底を訴えた。クロムウェルは〈パトニ討論〉を開いて,説得を通して陣営の解体を防ぎ,おりから反革命勢力の策動によって再発した第2次内乱を戦いぬいた。…

【平等主義】より

…これらのセクトが信教の自由を求めて闘った闘争の中から政教分離原則が生みだされたとき,政治的社会的平等ははじめて真に普遍的な基礎づけを与えられた。清教徒革命においてJ.リルバーンに率いられたレベラーズLevellers(水平派)の主張はそのもっとも早い例であり,彼らの提唱した〈人民協定The Agreement of the People〉は近代民主主義の最初の成文憲法案として,成人男子の普通選挙を規定するなど政治的平等の徹底的実現を図っている。 近代平等主義の第2の思想的契機は啓蒙思想である。…

※「人民協定」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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