付家老(読み)ツケガロウ

デジタル大辞泉 「付家老」の意味・読み・例文・類語

つけ‐がろう〔‐ガラウ〕【付家老】

江戸時代幕府から親藩に、または大名本家から分家に、監督補佐としてつけておいた家老。付け人家老。付け人。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「付家老」の意味・読み・例文・類語

つけ‐がろう ‥ガラウ【付家老】

〘名〙 江戸時代、監督や補佐などのために、幕府から親藩へ、または、大名の本家からその分家へつかわされた家老職。ふつう、先祖代々つかえている譜代家老よりも上位に置かれていた。つけびと。
※浄瑠璃・近江源氏先陣館(1769)一「鎌倉の附家老(ツケガラウ)片岡造酒頭春久」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「付家老」の意味・わかりやすい解説

付家老 (つけがろう)

江戸時代,幕府から親藩たる三家・三卿に,また諸藩では本藩より支藩に,藩主藩政の指導監督の目的で付けられた家老職。なかでも著名なものは三家の付家老で,尾張徳川氏の成瀬隼人正家(尾張国犬山,3万5000石),竹腰(たけのこし)山城守家(美濃国今尾,3万石),紀伊徳川氏の安藤帯刀家(紀伊国田辺,3万8000石余),水野対馬守家(紀伊国新宮,3万5000石余),水戸徳川氏の中山備前守家(常陸国松岡,2万5000石余)の5家を指す。家老として付属された関係で,家督を継ぐと同時に,家老の地位についた点,一般の家老と異なる。三家が幕府に反抗するのを未然防ぎ,幕藩体制をながく維持する重大な任務をおび,藩内に強権をふるった。そのため,ときには藩主の反感を買い,家中のはげしい排斥運動を誘発したこともある。もっとも幕府法上・藩制上の正式の役名ではなく,単なる俗称にすぎない。1868年(明治1)朝命にもとづき5家が藩屛に列せられたのを機に廃止となる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「付家老」の意味・わかりやすい解説

付家老
つけがろう

江戸時代、幕府が親藩に対し、また本藩が支藩に対し、施政を監督・指導するため遣わした家老。代表的なのは御三家(ごさんけ)の付家老で、尾張(おわり)家に付けられた成瀬(なるせ)氏(尾張犬山、3万5000石)、竹腰(たけのこし)氏(美濃(みの)今尾、3万石)、紀州家に付けられた安藤氏(紀伊田辺、3万8800石余)、水野氏(紀伊新宮(しんぐう)、3万5000石余)、水戸(みと)家に付けられた中山氏(常陸(ひたち)松岡、2万5000石)の5氏がある。代々の藩政を統轄し、格別な礼遇を与えられていた。近世後期には「御三家方御付」と題する武鑑が刊行されている。御三卿(ごさんきょう)(田安(たやす)、一橋(ひとつばし)、清水(しみず))の家老も幕府から付けられたが、これは御三家の世襲された付家老とは異なり、幕臣の一時的出向であった。

[松尾美恵子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android