改訂新版 世界大百科事典 「仮面うつ病」の意味・わかりやすい解説
仮面うつ病 (かめんうつびょう)
masked depression
内因性うつ病には違いないが,抑うつ気分や制止などの定型的な抑うつ症状が目だたず,身体的な症状の仮面をつけているうつ病のこと。1958年,精神医学者クラールV.A.Kralの命名による。古来から〈抑うつなきうつ病〉として知られていた。主な症状としては全身の倦怠感,疲労感,違和感,頭重,頭痛,胸部圧迫感,胸部空虚感,消化器系症状,食欲不振,めまい,口渇,味覚異常,心気亢進,便秘,睡眠障害,性機能障害,視力障害,全身各部位の痛みなどがあげられる。精神科以外の診療各科を訪れることが多く,器質的疾患が見いだされない場合に初めて内因性うつ病と診断される。一般にうつ病の初期には身体症状が前景に立ち,〈仮面うつ病〉の病像を呈する。またうつ病の全経過を通じて身体症状のほうが支配的な場合もある。
執筆者:飯田 真
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報