改訂新版 世界大百科事典 「企業犯罪」の意味・わかりやすい解説
企業犯罪 (きぎょうはんざい)
広くは企業活動と関連した犯罪を概観する視点から,公害,企業災害,やみカルテル,買占め,脱税,贈賄,粉飾決算,マルチ商法などの総称として用いられるが,その範囲は明確でなく,法的には意義・内容が確立していない。一方,企業と国家権力とのゆ着に着目すると,贈賄とその関連犯罪に重点が置かれる。これに対し,企業の刑事責任を追及するため,個人よりむしろ組織体としての企業(法人)を犯罪主体と把握し,刑法理論の再構築を試みる立場(法人処罰)からは,当該企業活動そのものが犯罪とされる場合に限定される。ただその範囲は,法人と個人の行為・故意・過失をどう関連づけて構成するかにかかわり,固まっていない。逆に,企業内部から生じる犯罪の予防・管理という視点からは,経営者や従業員が業務・地位を利用して行うなどの個人的な犯罪も含められる。なお〈両罰規定〉の項を参照されたい。
執筆者:田中 利幸
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報