凍傷は、寒冷刺激によって生じる組織の局所障害です。通常、マイナス4℃以下の凍結温度にさらされた時に発症します。多くの場合、寒冷にさらされやすい手足や顔面などの末梢組織にみられます。
凍傷は組織の凍結を伴いますが、組織の凍結を伴わない場合には凍瘡といいます。広義には、凍瘡も凍傷に含まれます。
全身性低体温症は、冬山での遭難や海難事故などで、全身的に寒気や冷水に長時間さらされ、体温が35℃以下に低下した状態をいいます。体温が33℃以下になると、意識障害や呼吸循環障害などが現れてきます。
①凍傷
マイナス4℃以下の寒冷刺激にさらされた時に発症します。発症には風力、湿度、
②凍瘡
慢性的な寒冷刺激に繰り返し曝露されることにより発症します。
③全身性低体温症
一次性低体温と二次性低体温に分類されます。一次性低体温は、全身性の寒冷曝露(冬山での遭難など)や、冷水曝露(海難事故など)が原因で起こります。二次性低体温の背景には、飲酒や薬剤の服用(睡眠薬、向精神薬など)、基礎疾患(甲状腺(こうじょうせん)機能低下症、
低体温の予後を悪化させる因子には、高齢、基礎疾患の存在、長時間の寒冷曝露、経過中の心停止、低酸素血症、低血圧、意識障害、高カリウム血症などがあります。
①凍傷
組織障害深度により、1度から4度に分類されます(表16)。1度および2度凍傷を表層性凍傷と呼び、3度および4度凍傷を深部凍傷と呼びます。表層性凍傷は、紅班や
②凍瘡
③全身性低体温症
皮膚は冷たく蒼白となり、意識障害、血圧の低下、
また、低体温では心電図上、いろいろな不整脈や伝導障害がみられます。体温が28℃以下になると致死的な不整脈である
①凍傷/凍瘡
凍結温度(マイナス4℃以下)に曝露されたか、あるいは慢性的な寒冷刺激に曝露されたかで、凍傷と凍瘡の区別は容易です。
凍傷では、外表面から深部組織の障害の程度を正確に診断することは困難なため、ドプラーやレーザードプラーによる血流検査、サーモグラフィ、MRIなどの検査を用いて、壊死組織の広がりや深度を調べます。
②全身性低体温症
患者さんの状況と臨床症状から診断は容易ですが、正確な深部体温の測定が必要になります。深部体温として、直腸温、膀胱温が用いられます。
①凍傷
患部の末梢部まで十分に赤みがもどるように、40~42℃の温水で急速に加温します。マッサージは、組織の損傷を生じるので行ってはいけません。1度および2度の凍傷では、感染予防と血行回復に主眼をおきます。3度以上の凍傷では、感染防止と血行回復のほかに、適切な外科的処置を必要とします。
②凍瘡
保温とマッサージが治療の中心になります。血行を改善するための薬剤も使用されます。
③全身性低体温
体を加温しながら、呼吸循環管理を中心とした全身管理が必要になります。凍傷を合併している場合には、凍傷の治療も必要になります。
凍傷では、一般外科を受診してください。凍瘡では、内科あるいは皮膚科を受診してください。
また、全身性低体温症と思われる人を発見した場合には、すぐに救急車を呼んで、病院に移送してください。
柳澤 裕之
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
低温環境下で一定の体温が維持できなくなることによっておこる障害で、局部と全身に分けられる。
局部障害には凍瘡(とうそう)(しもやけ)と凍傷がある。寒冷にさらされて皮膚の血管が麻痺(まひ)し、局所にうっ血を生じ、そこの血管壁の透過性が増して血管から透出液が組織にしみ出し、腫脹(しゅちょう)してかゆくなる。これが凍瘡であり、手足の指や耳たぶにできやすい。進行すると水疱(すいほう)ができたり、潰瘍(かいよう)になることもある。また零下10℃以下の寒冷に長時間さらされると、末梢(まっしょう)血管が収縮して血液循環が悪くなり、痛みと皮膚にチアノーゼ(紫色)から紅斑(こうはん)や水疱を生ずる。さらに進むと組織の血液不足から壊死(えし)がおこり、その部分が凍結して脱落することがある。これが凍傷で、手足、耳たぶ、鼻などにおこる。
全身障害は長時間全身を寒冷にさらしたときにみられ、体温維持が不可能となって体温が下降し、心臓や呼吸機能が障害され、意識の喪失からついには凍死する。直腸温度が24℃以下になれば助からない。
寒冷による障害には、このような器質的障害のほかに、手指の巧緻(こうち)性の低下や、指先の感覚、精神作用が鈍くなることによる作業能率の低下や事故の増加など、機能障害による影響もある。
[重田定義]
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