作文大体(読み)さくもんだいたい

改訂新版 世界大百科事典 「作文大体」の意味・わかりやすい解説

作文大体 (さくもんだいたい)

通説では,藤原宗忠が出家した息子覚晴のために1108年(嘉承3)に書き与えた漢詩文制作の参考書といわれる。しかし,これは第3次本で,10世紀から11世紀にかけて2次にわたって成立した編者不明の本(韻文,特に詩の作法に関する内容)に,宗忠が増補(散文作法の部分)編集しなおしたものである。現存諸本の源流と目される観智院本は,序,十則(詩を作る際の注意事項),筆大体,詩大体,雑体詩,詩雑例から成る。
筆者

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「作文大体」の意味・わかりやすい解説

作文大体【さくもんだいたい】

平安中期成立の漢詩文制作のための手引き書。室町時代まで増補・改訂が繰り返される。漢詩文制作の要点や知識を教える詩学書であり,作詩を学ぶものが平仄(ひょうそく)式などを知る好指針であった。平安期のものは《白氏文集》が引かれるなど,詩文作成の手引きとしての性格が強く,鎌倉・室町期のものは諷誦文(ふじゅもん),願文(がんもん),表白(ひょうびゃく)の制作の参考書という傾向が強い。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「作文大体」の意味・わかりやすい解説

作文大体
さくもんだいたい

平安後期の漢詩文制作のための入門手引書。作者未詳。多くの異本があるが、すべて観智院本(かんちいんぼん)を祖本とする。しかし観智院本自身も段階的に成立したもので、もともとは作詩上の注意と詩の形態説明した「按題(あんだい)」のみで、書名もこれに対してつけられた。その後、作文上の注意とその形態を説いた「筆大体」、作詩上の注意を細かく説明した「詩本体」「雑体詩」「詩雑例」の項が加わった。東山文庫本に作者として藤原宗忠(むねただ)の名がみえるが、宗忠は同書の「諸句体」の項の筆者で『作文大体』全体の作者ではない。

金原 理]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「作文大体」の意味・わかりやすい解説

作文大体
さくもんだいたい

平安時代後期の漢詩作法書。藤原宗忠編という。1巻。児童のための作詩指南書は古くから多くの学者によって書かれてきたが,それを集大成したもの。詩体,詩病,平仄 (ひょうそく) ,対句などについて説明をしている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android