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神仏に祈願の意を伝えるための文書。発願文,願書ともいい,〈がんぶみ〉とも読む。造寺・造塔・造仏・写経・埋経や仏事などに際して,その発願の趣意をのべ,現世・後世の安楽を願ったり,病気の平癒や武運長久,子孫繁栄を祈願したものが多い。その形式は,〈敬白〉で書きはじめ,願意を記した本文が続き,日付・差出書を書くのが一般であるが,中には,永享6年(1434)3月18日付関東公方足利持氏願文のように,心血をしぼって書きあげた血書願文や,永禄9年(1566)5月9日付上杉輝虎願文などのように武田信玄らを呪詛し,信玄を滅ぼしえた場合には,仏神事を興行するという誓約を含むようなものもある。ところで,願文は文書として,あるいは仏像・塔などの銘文として残っているものも多いが,儀式の中に占める願文の役割からすれば,神仏の前で読みあげられることが本来で,そのあとは焼かれたり,仏像の胎内にこめられたりしたものも多いと考えられる。
執筆者:千々和 到
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
神仏に願を立てるとき、その願意を表した文章。「がんぶん」とも読み、立願文(りゅうがんもん)ともいう。一般に、「敬白、立願事」で始まり、「立願之状如件(くだんのごとし)」という語で終わっている。武運長久、傷病平癒などをはじめ、造寺・造塔・造仏の供養や仏事を修した際などにも作成された。たとえば、法隆寺金堂の金銅釈迦(しゃか)三尊像の光背の銘文に「転病延寿」とか「往登浄土、早昇妙果」などと発願(ほつがん)しているのは、願文のもっとも古い例の一つと考えられる。神仏の前で神徳や利益(りやく)をたたえ、願意を表すので、その内容に偽りがなく、残されている多くの願文は信仰史研究上貴重な資料となっている。
[三橋 健]
神仏に対して祈願の意図を表明する文書。冒頭に「敬白」などと記し,祈願・供養の趣旨をのべる。文章をその道の名人にゆだね,多くは装飾的な漢文で書かれるが,神社に納める願文は宣命(せんみょう)体を用いることもある。天皇の願文を勅願文,建物や仏像を造立するときに作るものを造立供養願文という。祈願の意志の熱烈さを表現するため朱に血を混ぜた血書願文もある。室町時代以降は書状様式を用いる例がふえる。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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…神仏に祈願の意を伝えるための文書。発願文,願書ともいい,〈がんぶみ〉とも読む。造寺・造塔・造仏・写経・埋経や仏事などに際して,その発願の趣意をのべ,現世・後世の安楽を願ったり,病気の平癒や武運長久,子孫繁栄を祈願したものが多い。…
…願文の一種。願文は神仏に祈願する文書であるが,所領を寄進して所願を述べる寄進状形式の願文,造塔堂,造仏,写経などに際して所願を述べ供養する供養願文,施物を表示し諷誦(ふじゆ)を所願する諷誦文など多種に及ぶ。…
※「願文」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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