願文(読み)ガンモン

デジタル大辞泉 「願文」の意味・読み・例文・類語

がん‐もん〔グワン‐〕【願文】

仏・菩薩の本願を示す文。
法会・仏事などを営むとき、施主の願意を記す文。また、神仏に願を立てるとき、その趣旨を記す文。

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精選版 日本国語大辞典 「願文」の意味・読み・例文・類語

がん‐もんグヮン‥【願文】

  1. [ 1 ] 神仏に願を立てるとき、あるいは仏事を修するとき、願意を記した文章。がんぶみ。
    1. [初出の実例]「奉為太上天皇捨国家珍宝等、入東大寺願文」(出典:正倉院文書‐天平勝宝八年(756)六月二一日・東大寺献物帳)
    2. 「『罪逃がらかし給へ』と、右大弁季英の朝臣に仰せごとたまひて、『ぐんもんかきてせさせ給へ』ときこえて」(出典:宇津保物語(970‐999頃)蔵開上)
  2. [ 2 ] 最澄が初めて比叡山にはいったときの誓いを述べた文書。一巻。最澄の高弟仁忠が編述した「叡山大師伝」の中にあるのを抄出別行したもの。二五七字より成る短編であるが、天台宗古来重用する。

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百科事典マイペディア 「願文」の意味・わかりやすい解説

願文【がんもん】

発願の文。堂塔の建立や造仏・写経,また追善・逆修などの法会を行うに際して,神仏に施主の祈願内容を申し述べる文章。諷誦文などとともに広義の表白の一部をなすが,独立して唱えられることもある。華麗な字句で飾られることが多く,漢文学作品として注目される。《本朝文粋》などに所収のもののほか,〈願文集〉として類聚されたものもある。大江匡房の《江都督納言願文集》は,個人の願文を集成した例。→東大寺諷誦文稿
→関連項目菅家文草祭文作文大体性霊集胎内文書

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改訂新版 世界大百科事典 「願文」の意味・わかりやすい解説

願文 (がんもん)

神仏に祈願の意を伝えるための文書。発願文願書ともいい,〈がんぶみ〉とも読む。造寺造塔・造仏・写経・埋経や仏事などに際して,その発願の趣意をのべ,現世後世安楽を願ったり,病気の平癒や武運長久,子孫繁栄を祈願したものが多い。その形式は,〈敬白〉で書きはじめ,願意を記した本文が続き,日付・差出書を書くのが一般であるが,中には,永享6年(1434)3月18日付関東公方足利持氏願文のように,心血をしぼって書きあげた血書願文や,永禄9年(1566)5月9日付上杉輝虎願文などのように武田信玄らを呪詛し,信玄を滅ぼしえた場合には,仏神事を興行するという誓約を含むようなものもある。ところで,願文は文書として,あるいは仏像・塔などの銘文として残っているものも多いが,儀式の中に占める願文の役割からすれば,神仏の前で読みあげられることが本来で,そのあとは焼かれたり,仏像の胎内にこめられたりしたものも多いと考えられる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「願文」の意味・わかりやすい解説

願文
がんもん

神仏に願を立てるとき、その願意を表した文章。「がんぶん」とも読み、立願文(りゅうがんもん)ともいう。一般に、「敬白、立願事」で始まり、「立願之状如件(くだんのごとし)」という語で終わっている。武運長久、傷病平癒などをはじめ、造寺・造塔・造仏の供養や仏事を修した際などにも作成された。たとえば、法隆寺金堂の金銅釈迦(しゃか)三尊像の光背の銘文に「転病延寿」とか「往登浄土、早昇妙果」などと発願(ほつがん)しているのは、願文のもっとも古い例の一つと考えられる。神仏の前で神徳や利益(りやく)をたたえ、願意を表すので、その内容に偽りがなく、残されている多くの願文は信仰史研究上貴重な資料となっている。

[三橋 健]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「願文」の解説

願文
がんもん

神仏に対して祈願の意図を表明する文書。冒頭に「敬白」などと記し,祈願・供養の趣旨をのべる。文章をその道の名人にゆだね,多くは装飾的な漢文で書かれるが,神社に納める願文は宣命(せんみょう)体を用いることもある。天皇の願文を勅願文,建物や仏像を造立するときに作るものを造立供養願文という。祈願の意志の熱烈さを表現するため朱に血を混ぜた血書願文もある。室町時代以降は書状様式を用いる例がふえる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「願文」の意味・わかりやすい解説

願文
がんもん

造寺,修法,写経などによって,心に念願する言葉を述べた文章。発願文ともいう。

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世界大百科事典(旧版)内の願文の言及

【願文】より

…神仏に祈願の意を伝えるための文書。発願文,願書ともいい,〈がんぶみ〉とも読む。造寺・造塔・造仏・写経・埋経や仏事などに際して,その発願の趣意をのべ,現世・後世の安楽を願ったり,病気の平癒や武運長久,子孫繁栄を祈願したものが多い。…

【表白】より

…願文の一種。願文は神仏に祈願する文書であるが,所領を寄進して所願を述べる寄進状形式の願文,造塔堂,造仏,写経などに際して所願を述べ供養する供養願文,施物を表示し諷誦(ふじゆ)を所願する諷誦文など多種に及ぶ。…

※「願文」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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