デジタル大辞泉
「便無し」の意味・読み・例文・類語
びん‐な・し【便無し】
[形ク]
1 都合が悪い。ぐあいが悪い。びなし。
「―・き事など侍りとも」〈枕・八四〉
2 似合わしくない。びなし。
「簀子などは―・う侍りなむ」〈源・末摘花〉
3 いたわしい。ふびんである。びなし。
「いと―・ければ、許しやりぬ」〈風俗文選・落柿舎記〉
び‐な・し【▽便無し】
[形ク]「びんなし」の撥音の無表記。
「心寄せきこゆべき人となむ思う給ふるを、もし―・くやおぼしめさるべき」〈源・早蕨〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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びん‐な・し【便無】
- 〘 形容詞ク活用 〙
- ① 都合が悪い。具合が悪い。どうしようもない。びなし。
- [初出の実例]「ここはいとかくびんなきを、ひごろ侍る所に物のさとしなどせしかば」(出典:宇津保物語(970‐999頃)国譲中)
- 「はれにてもえひかへ候はず。御所にてもつかうまつられ候へば、かつはびむなきかたも候」(出典:古今著聞集(1254)一六)
- ② ふさわしくない。感心しない。また、厚かましい。ぶしつけである。びなし。
- [初出の実例]「びんなき事。年の初に一人はいかでか。今宵はや渡り給ね」(出典:宇津保物語(970‐999頃)蔵開下)
- 「Binnai(ビンナイ) マウシ ゴト ナガラ」(出典:日葡辞書(1603‐04))
- ③ 気の毒だ。哀れだ。いたわしい。びなし。
- [初出の実例]「きのふの価(あたい)、かへしくれたびてむやと佗。いと便なければ、ゆるしやりぬ」(出典:俳諧・本朝文選(1706)五・記類・落柿舎記〈去来〉)
便無しの語誌
( 1 )名詞「便」(ついで・便宜・都合)と形容詞「なし」が複合した語で、①が本来の意。ほぼ同じ意味を表わす語に「不便(ふびん)」があるが、前者は対象を外側から観察し、分析的に把握した末に下す客観的・理性的な判断を表わすのに対して、後者は情意的な判断を表わす。
( 2 )中世以降、③の意味で使われるようになるが、その意味では「ふびん」が多用され、その勢力をしだいに弱めていく。
便無しの派生語
びんな‐げ- 〘 形容動詞ナリ活用 〙
便無しの派生語
びんな‐さ- 〘 名詞 〙
び‐な・し【便無】
- 〘 形容詞ク活用 〙 ( 「びんなし」の撥音「ん」の無表記 ) =びんなし(便無)
- [初出の実例]「告げ聞こゆべしとなん、思ひしかど、びなきところに、はたかたうおぼえしかばなん」(出典:蜻蛉日記(974頃)下)
便無しの派生語
びな‐げ- 〘 形容動詞ナリ活用 〙
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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