末摘花(読み)スエツムハナ

デジタル大辞泉 「末摘花」の意味・読み・例文・類語

すえつむはな【末摘花】[書名]

源氏物語第6巻の巻名。光源氏、18歳から19歳。源氏常陸宮ひたちのみやの娘末摘花と契りを結び、翌朝大きな赤鼻醜女だったことを知る。
源氏物語の登場人物常陸宮の娘。容貌は醜いが、古風で実直な性格をもつ。
誹風はいふう末摘花」の略称

すえつむ‐はな〔すゑつむ‐〕【末摘花】

《花が茎の末の方から咲きはじめるのを順次摘み取るところから》ベニバナ別名 夏》わが恋は―の莟かな/子規
[補説]書名別項。→末摘花

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精選版 日本国語大辞典 「末摘花」の意味・読み・例文・類語

すえつむ‐はなすゑつむ‥【末摘花】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. ( 茎の末に咲く黄色の頭花を摘み取って染料とするところからいう ) 植物「べにばな(紅花)」の異名。《 季語・夏 》
      1. [初出の実例]「よそのみに見つつ恋ひなむくれなゐの末採花の色に出でずとも」(出典:万葉集(8C後)一〇・一九九三)
    2. (べに)をいう女房詞。〔日葡辞書(1603‐04)〕
  2. [ 2 ]
    1. [ 一 ] 「源氏物語」第六帖の巻名。源氏一八歳の三月から一九歳の正月まで。光源氏は常陸宮の姫君と契りを結ぶが、翌朝になって鼻が長く垂れて先の赤い醜女だったことを知る。短編小説的な巻。
    2. [ 二 ] 「源氏物語」に登場する女性。常陸宮の姫君。容貌は醜く、古風で不器用だが、ひかえめで実直な性格を持つ。
    3. [ 三 ]はいふうすえつむはな(誹風末摘花)

末摘花の補助注記

( [ 一 ]について ) 紅(くれない)の染料とするところから、挙例の「万葉」のように、上代の和歌では「紅の末摘花」などと詠んで「色に出づ」を導き出す序詞とされることがある。


うれつむ‐はな【末摘花】

  1. 〘 名詞 〙 植物「べにばな(紅花)」の異名。すえつむはな。

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改訂新版 世界大百科事典 「末摘花」の意味・わかりやすい解説

末摘花 (すえつむはな)

川柳風狂句艶句集。《誹風末摘花》とも記す。初編は書肆花屋久次郎編。1776年(安永5)刊。二編以下は浅草似実軒酔茶(戯号)編。83年(天明3)二編,91年(寛政3)三編,1801年(享和1)四編刊。初編の奥に〈川柳評万句合(まんくあわせ)書抜〉とあるように,初代川柳の万句合摺物から〈末番(すえばん)句(ばれ)〉だけを抜いたもので,末番の花を摘み集めたというしゃれた書名である。4編合計2331句。大正末年に沢田五猫庵の手により,八編までが追加編集されている。さらにその拾い落しを集めた《古川柳艶句選》(岡田甫編,1958)により完備した。《末摘花》は1947年まで繰返し猥褻(わいせつ)書として発禁処分をうけてきたが,性愛に関する人間の諸姿態心情を冷静に見つめた滑稽文学の粋である。各巻頭句をみると,〈蛤は初手赤貝は夜中なり(初夜)〉〈初会にはうつわをかすとおもふ世〉〈陰茎(いんきよう)がおへたと学者妻にいゝ〉〈木のやうにして仲人は床をとり〉で飾っている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「末摘花」の意味・わかりやすい解説

末摘花
すえつむはな

江戸中期の川柳(せんりゅう)句集。4編。初編1776年(安永5)刊、4編1802年(享和2)刊か。各編約500~600句を収める。書名は『誹風(はいふう)末摘花』とも。「末摘花」は、川柳評万句合(まんくあわせ)の末番(すえばん)(末等入賞)中より恋の句を抜粋したことを、『源氏物語』末摘花の巻に言い掛けた命名で、卑俗で滑稽(こっけい)な恋の句を集成し、『柳多留(やなぎだる)』の恋の句版を意図したもの。「蛤(はまぐり)は初手(しょて)赤貝(あかがい)は夜中(よなか)なり」の巻頭句をはじめとして、句の素材は卑猥(ひわい)であるが、表現は軽妙な滑稽感にあふれた佳句が多く、また江戸風俗資料としても貴重。なお、大正に至って、沢田例外(れいがい)が5~8編を編んだ。

[岩田秀行]

『岡田甫編『定本誹風末摘花』(1952・第一出版社)』『岡田甫著『川柳末摘花詳釈』上・下・拾遺編(1955~56・有光書房)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「末摘花」の意味・わかりやすい解説

末摘花
すえつむはな

『誹風末摘花』の略称。江戸時代後期の川柳集。4巻。初代柄井川柳の撰になる『川柳評万句合』のなかから破礼句 (ばれく) と呼ばれるわいせつな句だけを集めたもので,初編が安永5 (1776) 年に刊行され,第2編天明3 (83) 年,第3編寛政3 (91) 年,第4編享和1 (1801) 年と続刊された。性が洪笑の対象とされているだけという限界はあるが,色欲を通して人情の機微をとらえた佳句も多く,風俗研究の資料としての価値も高い。

末摘花
すえつむはな

源氏物語』の「末摘花」の巻の女主人公。常陸宮の娘。源氏は好奇心を起して通い,やがて顔色青く鼻が垂れてその先が赤いという醜さに驚くが,のち哀れんでその後も世話をする。のちには醜女を嘲笑していうときに用いられ,また川柳集の書名ともなった。

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百科事典マイペディア 「末摘花」の意味・わかりやすい解説

末摘花【すえつむはな】

川柳集。《誹風末摘花》とも記す。4編4冊。1776年―1801年刊。初編は書肆花屋久次郎編か。2編以下は似実軒酔茶編。川柳評前句付《万句合》の中から,性的風俗を扱った末番句(すえばんく),いわゆる〈バレ句〉を選び出し,一句立として集めた艶句集。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「末摘花」の解説

末摘花 すえつむはな

「源氏物語」の登場人物。
常陸宮(ひたちのみや)の姫。容姿がみにくく,ながくのびた鼻の先が末摘花(ベニバナ)でそめたようにあかい。光源氏はそれとは知らず一夜をちぎり,その後も気の毒におもい面倒をみるが,姫は出家する。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「末摘花」の解説

末摘花 (ウレツムハナ・スエツムハナ)

植物。キク科の越年草,園芸植物,薬用植物。ベニバナの別称

末摘花 (スエツムハナ)

植物。ツツジ科のクルメツツジの園芸品種

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世界大百科事典(旧版)内の末摘花の言及

【源氏物語】より


[構成]
 現代では全編を三部構成と見る説が有力である。第1部は,1桐壺(きりつぼ),2帚木(ははきぎ),3空蟬(うつせみ),4夕顔,5若紫,6末摘花(すえつむはな),7紅葉賀(もみじのが),8花宴(はなのえん),9葵,10賢木(さかき),11花散里(はなちるさと),12須磨,13明石,14澪標(みおつくし),15蓬生(よもぎう),16関屋,17絵合,18松風,19薄雲,20朝顔,21少女(おとめ),22玉鬘(たまかずら),23初音(はつね),24胡蝶,25蛍,26常夏(とこなつ),27篝火(かがりび),28野分,29行幸(みゆき),30藤袴(ふじばかま),31真木柱(まきばしら),32梅枝(うめがえ),33藤裏葉(ふじのうらば)。第2部は,34若菜上,35若菜下,36柏木(かしわぎ),37横笛,38鈴虫,39夕霧,40御法(みのり),41幻(まぼろし)。…

【ベニバナ(紅花)】より

…花から紅をとるほか,薬用にも栽培された。古くはスエツムハナ(末摘花),クレノアイ(呉の藍)とも呼ばれ,〈末摘花〉は《源氏物語》の巻名にもなっている。最近では油料作物としてアメリカやオーストラリアでも栽培が多い。…

※「末摘花」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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