外国から原材料または半製品を輸入し、これを自国で加工して製品をつくり、それを輸出する貿易形態。加工貿易を行っている国は原材料の海外依存度の高い国であり、典型として日本、イギリス、ドイツなどの先進工業国がある。とくにわが国の場合は、天然資源に恵まれていないため、原材料を海外に求め、加工してつくられた製品の一部を輸出し、その外貨収入でふたたび原材料や食料、その他の製品を輸入する加工貿易国として発展、現在も貿易の中心は加工貿易である。しかし、現在は工場の海外移転の増加やアジア諸国の工業化の進展等を背景に、1985年(昭和60)には31%であった製品輸入比率が2001年(平成13)には61%へと上昇、日本の貿易構造は変化をみせている。
個々の貿易取引、つまり業者レベルにおける加工貿易の代表的なものとしては、委託加工貿易と中継加工貿易がある。前者は、外国の業者から原材料の供給を受け、これを加工し、外国業者の指定する国に輸出する取引形態である(これには自国の業者が原材料を外国の業者に供給し加工を委託する逆の形態もある)。後者は、業者が自己の危険と計算において外国から原材料を輸入し、これを加工して得た製品を輸出する取引形態である。このような業者レベルの加工貿易を振興するため各国とも関税上の優遇措置をとっている。わが国では、輸出品の製造に用いられる輸入原材料の関税を免除するという保税工場制度、すでに納めた関税を払い戻すという戻税制度などがある。
[田中喜助]
輸入原材料を用いて自国内で加工・製造し,できあがった製品を輸出する貿易。天然資源に恵まれない日本では,これまでも,綿花,鉄鉱石,石油といった工業用原材料やエネルギー資源を輸入し,綿製品や鉄鋼といった工業製品を輸出する加工貿易を行ってきた。さらに1960年代以降は,自動車や電気製品のように加工工程のより複雑な,高度の技術が必要な工業製品を輸出するようになった。しかし一方では,国内加工における賃金が高くなったため,加工工程を海外に委託する加工生産方式をとるケースもふえている。この委託加工貿易は,日本(委託側)が機械設備や原材料を提供し,必要な技術指導を行い,受入国は,労働と多くの場合には工場や建物を提供して加工を行い,製品当りの加工賃を受け取るものである。日本側には国内よりも安価な労賃で加工生産が行えるメリットがあり,受入国側には,外貨の獲得,技術の移転,雇用機会の拡大等の効果が期待できる。
執筆者:佐々波 楊子
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