保護リレー方式(読み)ほごりれーほうしき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「保護リレー方式」の意味・わかりやすい解説

保護リレー方式
ほごりれーほうしき

保護リレーによって電力系統の保護を行う方法、考え方あるいはシステムのこと。保護継電方式ともいう。保護リレー方式の目的は、雷などによって発生する事故を高速に検出し、当該設備をいち早く電力系統から切り離すための「事故除去」と、引き続いて発生するおそれのある周波数低下、設備過負荷など、系統動揺の波及を防止する「事故波及防止」、および事故による停電が発生した場合に停電箇所を早期に復旧する「復旧の迅速化」の三つに大別できる。

 事故除去を目的とした保護リレー方式にはその動作原理により、保護すべき回路電流が一定値以上になったとき動作する過電流リレー方式、過電流に加えてその方向も検出する方向(過電流)リレー方式、リレーの設置点と事故点までの電気的距離を計算しそれによって動作する距離リレー方式、平行二回線送電線の両回線の電流あるいは電力を比較して事故を検出する回線選択リレー方式、送電線の両端の電流差が異常になったとき動作する電流差動リレー方式など、多くの種類がある。

 電力系統は、発電機、送電線、変圧器、母線、配電線負荷などのほか、多くの機器によって構成され、事故時の電気的特性も異なることから、それぞれの設備ごとに、適切なリレーを適切な位置に設置し、どのような事故に対しても保護できるようにしている。保護リレー方式は、電力系統事故時に不動作や誤動作が発生すると、大きな事故に発展するおそれがあるので、つねに高性能で高信頼度のものが要求される。事故除去用保護リレー方式は保護上の盲点をなくすため、保護区間を重ね合わせるようにして配置し、いかなる部分に事故が発生しても、遮断器によって、最小の範囲で除去できるように構成されている。また、高速に事故除去を行う主保護リレー方式と、これが失敗したときに、すこし時間をおいてバックアップで事故除去を行う後備保護リレー方式を併設している。たとえば、主保護としてはマイクロ波を活用した電流差動リレー方式、後備保護としては距離リレー方式、のように構成している。

 事故波及防止用保護リレー方式としては、電力系統の周波数が大幅に低下するとき応動する不足周波数リレー方式、発電機が脱調(同期機間の位相差が大きくなりすぎて同期が外れること)したときに応動する脱調保護リレー方式などがある。また、同期不安定(安定度)、周波数不安定、電圧不安定、過負荷の連鎖などにより事故が波及拡大し電力系統の大規模停電につながるおそれのある緊急事態に対処するため、系統全域にまたがる情報を収集し、系統を安定化させるための緊急時制御を行うシステムが実用化されている。

[内田直之]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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