六訂版 家庭医学大全科 「側頭骨骨折」の解説
側頭骨骨折
そくとうこつこっせつ
Temporal bone fracture
(耳の病気)
どんな外傷か
側頭骨には、聴覚の神経、体のバランス機能を担う平衡感覚の神経、顔面表情筋を司る顔面神経などさまざまな神経が走っています。ですからここを骨折すると、これらの神経が障害されていわゆる「神経症状」が出てきます。また、脳を支える頭蓋を構成する骨のひとつですから、脳のダメージも伴っていることがあり、意識障害を起こす場合もあります。
外傷の種類、打撲の強さによって、命に関わる重症からごく軽傷の場合まであります。必ず専門医の診察を受けたほうがよいでしょう。
症状の現れ方
顔の動きが悪い、水を飲むと口からもれてしまう、笑うと顔がゆがむ、という場合は
頭部を強打している場合には、意識障害を起こして頭がぼーっとしているため、これらの症状をはっきりと気づかない場合もあります。骨折によって、耳から血液が出たり、そこに細菌が感染するとうみが出る場合もあります。水のようにさらさらした液体が出てくる場合は、
検査と診断
外傷の起こり方と前述の症状によって側頭骨骨折が疑われた場合には、X線検査が診断に最も役に立ちます。耳のX線検査、頭部CT、側頭骨のターゲットCTで骨折の部位、程度を診断します。側頭骨長軸に平行な骨折線のある縦骨折と、垂直な横骨折に分類され、後者のほうがより重傷です。
治療の方法
通常は入院して安静にします。
安静にしても改善しない髄液漏、高度の麻痺がある即発性顔面神経麻痺、内耳のなかにある外リンパ液が中耳に漏れ出てくる外(がい)リンパ瘻(ろう)による急性難聴の時には、早期に手術を行います。また、受傷後数カ月たっても改善しない伝音難聴も手術を行います。
池園 哲郎
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報