優先株劣後株(読み)ゆうせんかぶれつごかぶ

改訂新版 世界大百科事典 「優先株劣後株」の意味・わかりやすい解説

優先株・劣後株 (ゆうせんかぶれつごかぶ)

一般に同一会社の各株式原則として同等の立場に立ち,その権益は平等である。ところが一定の事項について内容の異なる種類の株式が認められる(商法222条)。ある会社の株式が,ある権利内容について2種以上存する場合,標準となる株式を普通株と称し,この普通株を標準として株式の権益の一つあるいは二つ以上について,優先的な内容すなわち,いわゆる優先権の認められるものを優先株と称し,他方劣後的な内容のものを劣後株と称する。そしてその優先権または劣後権の対象たる権益の内容は,一般には,利益または利息配当残余財産分配などの一つあるいは双方についてであることが多いので,とくにこれらの権益について優先権の与えられるものを優先株と称し,逆に劣後的地位の与えられるものを劣後株または後配株と称することが多い。中でも,株式の種別利益配当についての優先・劣後によってなされることが多く,かつ優先株とよばれるものの多くは利益配当について優先権をもっていることが一般的であるので,一般に,優先株とよばれるものの多くは利益配当上の優先株であり,劣後株または後配株とよばれるものの多くは,利益配当上の劣後株である。もっとも,たとえば利益配当については優先するが残余財産の分配については劣位におかれるなど,株主権の一内容については優越的取扱いを受けつつ,他の内容については劣等な取扱いを受ける株式(混合株)も存するので,優先株・劣後株という称呼は理論上は正確さを欠くものである。

 利益配当についての優先・劣後の区別は一般に,配当享受の順序について存するものが多い。つまり優先株は普通株に配当がなされる前に一定額の利益配当を受けうるという内容をもつものが多い。この場合,会社に配当可能利益が少なければ,優先株は利益配当を受けうるが,普通株には利益配当がないということになる。また,劣後株(または後配株)は普通株が所定額の利益配当を受けて後なお配当可能利益が残存する場合にのみ,利益配当が認められるというものが多い。もっとも,配当享受の額などと関連して,その種別の方法・内容には複雑なものも多い。

 優先株の中には優先配当を受けてなお残余の利益からも普通株とならんで配当を受けうる参加的優先株と,そうでない非参加的優先株とがあり,またある年度の配当が所定の優先配当額に達しない場合に,その不足額を後の年度の利益から補充される累積的優先株と,そうでない非累積的優先株とがある。

 株式を種別化するのは,おもに,投資者の好みに合った株式を設け,企業資本を吸引しようとするところにあるが,優先株は普通株に比べ投機性が少なく,比較的安全性を望む投資者を対象とするものである。これに対して劣後株は普通株よりも投機性を有することになる。日本では数種の株式の発行はあまり行われないので,優先株・劣後株の事例は比較的少ない。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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