株主が社員たる資格に基づいて有する各種の権利。会社法ではさまざまな株主権が規定されている。これは内容、保有要件によって以下のように分類される。
(1)内容 株主権はその内容によると、自益権と共益権とに分類される。自益権とは、会社から経済的利益を受けることを目的とする権利をいい、剰余金配当請求権(会社法105条1項1号)、残余財産分配請求権(同法105条1項2号)、株式買取請求権(同法116条~119条)などがある。共益権とは、会社の管理運営に参加することを目的とする権利をいい、株主総会における議決権(同法105条1項3号)、株主総会決議取消訴権(同法831条1項)、会社組織に関する行為の無効訴権(同法828条)、取締役の違法行為の差止請求権(同法360条)などがある。そもそも両者を分類する理由は、自益権はその行使によって権利者のみが利益を得るだけであるが、共益権は権利を行使することによって他の株主の利益にも影響を与えるために、ある程度の制約を認める必要があるからである。
(2)行使要件 株主権はその行使要件によると、単独株主権と少数株主権とに分類される。単独株主権とは、1株の株主でも行使できる権利であり、自益権のすべて、議決権など一部の共益権がこれに該当する。少数株主権とは、総株主の議決権の一定割合または一定数以上の株式保有を行使要件とする権利であり、提案権(会社法303条、305条)、株主総会招集権(同法297条)、取締役等の解任請求権(同法854条、479条)、帳簿閲覧権(同法433条)などがある。そもそも、両者を分類する理由は、権利が強力で濫用の危険が大きいものを少数株主権とし、出資額の多い株主のみに行使を限定することにある。なお会社法では、各種類株式を設計することによって、前記の株主権の一部を与えないものとすることができるが、剰余金配当請求権および残余財産分配請求権の全部を与えない旨の定款の定めは無効である(同法105条2項)。
[戸田修三・福原紀彦]
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…監督是正権は,多数派株主による会社の運営から生ずる病理現象の防止または排除のために認められる権利であって,少数派株主の保護を目的とする。
[単独株主権・少数株主権]
単独株主権とは,1株のみを有する株主でも行使しうる権利で,自益権はすべてこれに属する。共益権のうち,議決権はこれに属するが,監督是正権では,設立無効訴権,総会決議取消訴権,累積投票請求権,代表訴訟提起権,取締役・清算人の違法行為差止請求権,新株発行差止請求権,新株発行無効訴権等,そのうちの一部がこれに属するにとどまる。…
※「株主権」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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