デジタル大辞泉
「先途」の意味・読み・例文・類語
せん‐ど【先途】
1 (多く「ここを先途と」の形で)勝敗・運命などの大事な分かれ目。せとぎわ。「ここを先途と奮いたつ」
2 これから進む先。行き先。前途。
「―いづくを期せず」〈平家・一二〉
3 行き着くところ。また、人の死。
「名利に溺れて―の近き事をかへり見ねばなり」〈徒然・七四〉
4 家柄によって定まる最高の官職。
「仏神の祈りて、摂籙の―には必ず達すべき告ありて」〈愚管抄・六〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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せん‐ど【先途】
- 〘 名詞 〙
- ① これからさき。進んで行くさき。なりゆき。ゆきさき。前途。
- [初出の実例]「先途いづくを期せず、後会其期をしらず」(出典:平家物語(13C前)一二)
- ② 結局のところ。ゆきつくところ。最期。また、人の死。
- [初出の実例]「惑へるものはこれを恐れず。名利に溺れて先途の近き事をかへり見ねばなり」(出典:徒然草(1331頃)七四)
- ③ 勝敗、成否あるいは存亡の決する大事の場合。一旦緩急ある場合。わけめ。せとぎわ。
- [初出の実例]「責め入り責め入り戦ひければ、悪七別当・手取の与次・高間三郎・同四郎・吉田太郎已下、爰を前途(せんど)と防ぎけり」(出典:保元物語(1220頃か)中)
- ④ 昇進の過程。
- [初出の実例]「有レ限先途之時懸催之条勿論也」(出典:経覚私要鈔‐応永二二年(1415)一一月二八日)
- ⑤ 家柄によって定まる、昇進できる最高の官職、または社会的地位。
- [初出の実例]「さはあれど、所々に諂ひありきて人にならされたちなば、哥にとりて人に知らるる方はありとも遷度の障りとは必ずなるべかめり」(出典:無名抄(1211頃))
先途の語誌
( 1 )「先途」は、中国古典には見当らないが、「前途」はあり、その「前」は漢音では「セン」と読まれたらしい。日本では古くは「色葉字類抄」に「前途 セント」とあり、③の挙例の「保元物語」にも「せんど」に「前途」の表記が用いられている。しかし、「前」には一般に呉音「ゼン」が用いられて、「前途」は「ゼント」と読まれ、「せんど」には「先途」の表記が次第に通用するようになり、二語に分化した。
( 2 )「先途」は、元来の①の意味から②③の意に展開するが、「前途(ぜんと)」は、もっぱら「行く先」「将来」という意味に限られている。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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