色葉字類抄(読み)イロハジルイショウ

デジタル大辞泉 「色葉字類抄」の意味・読み・例文・類語

いろはじるいしょう〔いろはジルイセウ〕【色葉字類抄】

平安時代国語辞書。2巻または3巻。橘忠兼たちばなただかね著。天養元年~治承5年(1144~81)ごろ成立。平安末期国語を頭音によっていろは47部に分け漢字とその用法とを簡単に記す。「伊呂波字類抄」は増補された10巻本をさし、鎌倉時代に成立。

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精選版 日本国語大辞典 「色葉字類抄」の意味・読み・例文・類語

いろはじるいしょういろはジルイセウ【色葉字類抄・伊呂波字類抄】

  1. 平安時代の辞書。二巻本、三巻本を色葉字類抄、十巻本を伊呂波字類抄と表記しわけている。橘忠兼著。最も古い体裁と見られる二巻本の原本は伝わっていない。三巻本は治承(一一七七‐八一)の頃増補、十巻本は鎌倉時代の大増補による。単語を頭音によりいろは四七篇に分類し、当てうる漢字をあげ、各篇の内を天象、地儀、植物など二一部門に分け、三巻本ではさらに、各部門の和訓には天躰、歳時などを註し、字音語には天部、地部等、さらに時節分、年月分などを註し、語によりその意味・性質を簡略に示す。また、字音語、和訓に施された声点はアクセント資料となる。国語を主としたわが国最初の書くためのいろは引き辞書。

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改訂新版 世界大百科事典 「色葉字類抄」の意味・わかりやすい解説

色葉字類抄/伊呂波字類抄 (いろはじるいしょう)

辞書。著者は橘忠兼。平安時代の末期に作られた。日本の古辞書のうちで,最も注意すべきものの一つ。これまでの辞書が漢字を引いて,そのよみかたを求める体裁のものであったのに対し,ことばからこれにあてる漢字を求めるようになっている。ことばの配列をいろは順にしたことは,その後数百年にわたる辞書の組織のもととなった。2巻本と3巻本と10巻本がある。2巻本は3巻本の稿本とみられる。10巻本は,鎌倉時代になってから大増補されたもので,内容ははなはだ豊富であるが,それだけに,3巻本と10巻本とは,それぞれに,別個の独自の価値をもつ。10巻本は,江戸時代の初期に当時の学界に紹介され,従来〈伊呂波字類抄〉の名で引用されているのは,この10巻本である。3巻本のほうは,昭和年代にはいって初めて複製本で世に知られ,前田本(中巻を欠く)と,それを補う黒川本との二つがある。
辞書
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百科事典マイペディア 「色葉字類抄」の意味・わかりやすい解説

色葉字類抄【いろはじるいしょう】

平安時代の国語辞書。橘忠兼撰。3巻本として1180年ごろ成立(2巻本もあるが,3巻本の稿本と見られる)。平安末期の通行語のうち,漢字で表記する習慣のあった国語を,頭音によって〈いろは47部〉に分けて配列し,あてるべき漢字とその用法とを簡単に記したもの。それまでの辞書が漢字をひいてそのよみ方を求めるものであったのに対し,ことばをひいて漢字や用法を知る形となっている点で画期的であり,その〈いろは〉順の配列はその後の辞書の組織のもととなった。和語漢語数万を収める。鎌倉時代にこれに増補して10巻本の《伊呂波字類抄》が成立した。→辞典国語辞典
→関連項目寺社縁起和名類聚抄

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「色葉字類抄」の意味・わかりやすい解説

色葉字類抄
いろはじるいしょう

3巻から成る国語辞典。橘忠兼 (ただかね) 著。2巻本に補訂を重ね,治承年間 (1177~81) に成立。平安時代末期の語彙を,まず語頭音でイロハ順に 47部 (ヲとオは,アクセントが高く始るか低く始るかで区別) に分け,次いで天象,地儀,植物,人倫などの意味分類により配列し,それに漢字をあて,さらに用例を示している。問題としている単語にどういう漢字をあてるべきかを知るために引く和漢辞典であり,そのため,平安末期における漢字表記の習慣を調べるのに好適の資料となっている。『和玉篇 (わごくへん) 』『節用集』など,のちの辞書に大きな影響を与えた。 10巻本の『伊呂波字類抄』 (著者未詳,鎌倉時代初期までに成立) は,この辞書の増補版である。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「色葉字類抄」の意味・わかりやすい解説

色葉字類抄
いろはじるいしょう

院政期成立の国語辞書。編者は橘忠兼(たちばなのただかね)。2巻、3巻、10巻(通例『伊呂波字類抄』と表記)の諸本がある。平安末期の日常実用の語を主に、漢文訓読語をもあわせて、広く和語・漢語を採録。語の頭音によって全体を伊呂波47篇(へん)に分け、さらにその各篇について、意義分類に従って天象・地儀など21部をたてて収録語を類聚(るいじゅう)。当時普通に使用された漢文体の文章(漢詩文、記録、文書など)を作成するうえで心得るべき語、漢字表記を中心に、とくに漢語が豊富に集録されている点に特色がある。当代における国語の漢字表記の規範を知るうえで、また当時の社寺、国郡、姓名など、固有名詞の漢字表記の読み方の手掛りが得られる点で重要な文献である。『世俗字類抄』『節用文字』は本書と祖本を同じくする。

[峰岸 明]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「色葉字類抄」の解説

色葉字類抄
いろはじるいしょう

内膳司典膳の橘忠兼が編纂した平安後期の辞書。当初の体裁を伝える天養~長寛年間(1144~65)成立の2巻本,それに補訂を加えた天養~治承年間(1144~81)成立の3巻本,鎌倉初期に大幅に増補した流布本の10巻本「伊呂波字類抄」がある。日常使用された和語・漢語をいろは順に48編に区分し,さらにそれぞれを天象・地儀・植物・動物・人倫・人体・人事・飲食・雑物・光彩・方角・員数・辞字・重点・畳字・諸社・諸寺・国郡・官職・姓氏・名字の21部に序列し,和訓(反切)・用法などを示す。寺社の由来・縁起にも詳しい。当時の漢字表記を知りうる一級史料。

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旺文社日本史事典 三訂版 「色葉字類抄」の解説

色葉字類抄
いろはじるいしょう

平安末期,わが国最古のいろは引き国語辞書
「伊呂波字類抄」とも書く。橘忠兼編。初め2巻本,のちに増補されて,鎌倉時代には10巻本が流布した。当時の語彙 (ごい) や漢字の読みを知る貴重な史料。

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世界大百科事典(旧版)内の色葉字類抄の言及

【辞書】より

… 平安時代の韻書には《東宮切韻》のほかにも《季綱切韻》《孝韻》《小切韻》などがあったようであるが,散逸した。また,院政時代には《色葉字類抄(いろはじるいしよう)》が出た。異本が多いが,3巻本(〈前田本〉〈黒川本〉など)は橘忠兼の著で,天養~治承期(1144‐81)ころの間に成立したといわれている。…

※「色葉字類抄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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