光と電子の挙動を結合したエレクトロニクスの総称。オプトエレクトロニクスともいう。1955年ローブナーE.E.Loebner(1924― )がエレクトロルミネセンスと受光ダイオードを組み合わせて光で仲介した電子回路をつくり、アメリカ無線通信学会誌でこの名を用いたのが初めである。
[岩田倫典]
光エレクトロニクスの発展は、半導体技術の進歩と切り離せない。1960年代にはレーザー発振によって人類がかつてみたことのないコヒーレント(可干渉性)な光がつくられ、レーザー光による立体写真ホログラフィーが現れた。化合物半導体による発光ダイオード、シリコンによる太陽電池も実現されている。
1970年代には室温で連続発振する半導体レーザー、髪の毛ほどの細い光ファイバーが開発され、光通信を可能にした。液晶、蛍光表示管、プラズマディスプレーもこのころから普及し、固体光センサーは固体テレビ撮像素子にまで進化している。レーザーを応用した新しい画像装置光ビデオディスクとか、音響装置デジタルオーディオディスクも生まれ、またパソコンなどの手軽な大容量メモリーとしても普及している。
光エレクトロニクス産業はその後の技術革新により用途は広がり、1980年には世界市場で10億ドル、日本では400億円であったのが99年には160倍の6兆4000億円に達している。
[岩田倫典]
光エレクトロニクスの応用分野は、光通信をはじめとして計測用、医学用、工作機用、エネルギー関連機器、情報関連機器に大別される。
光通信は光のもつ高い周波数を利用して大量の情報を伝送する通信方式で、低損失で伝送する約0.1ミリメートル径の細いガラス繊維の光ファイバーと、高い周波数で信号を取り扱える半導体レーザー、微弱な光信号を検出する受光ダイオードで構成されている。すでに、日本の通信幹線網を構築、海底ケーブルとして太平洋を横断しアメリカ大陸へ、さらに東南アジア、オーストラリア、ヨーロッパからモロッコ、エジプトまで、最高毎秒160ギガビットの伝送速度のものが敷設され、さらに1280ギガビットのものが計画されている(2000年現在)。光通信は外界の電磁界に影響されず、軽量で、長距離伝送が可能なので、電話、テレビはもちろん、コンピュータのデータ転送に用いられている。
計測用としては、レーザー光の細いビーム性と直進性、可干渉性を利用して、距離測定、形状検査、成分計測、位置決め、流速・微小変位・振動測定などの装置のほか、レーザー・レーダー、光ジャイロ、コリメーター、高電圧・高電流・磁界測定器が開発実用化されている。これら計測器を非常に使いやすいものにしているのは、光波の偏波面を保存して任意の箇所にコヒーレントなレーザー光を送ることができる偏波面保存ファイバーの実現がある。
医学用としては、光ファイバーを利用した胃カメラ、レーザーの細束性と高密度なエネルギーを利用したレーザーメスがあり、外科用のほか内視鏡とも連動する。癌(がん)の光力学的治療とともに、エキシマレーザーを用いた角膜の屈折率矯正手術は2万人の近視眼を矯正したので注目されている。低出力レーザーは緘(はり)治療、疼痛(とうつう)緩和用などに普及している。
工作機械としては、レーザーを利用した無接触微細ボンダー、半導体ウェハー・スクライバー、レーザーを用いた切断機、細孔加工機などの直接的な利用のほかに、固体光センサーは産業用ロボットの視覚センサーにも広く使われ、希ガスとハロゲンガスの組合せによって種々な紫外波長が得られるエキシマレーザーはギガビットメモリー製作のための微細加工技術に道を開いている。
エネルギー関連機器には、大電流用光スイッチ、同位元素分離装置、大出力ガスレーザーを用いた核融合、太陽光エネルギーを半導体により電気エネルギーに変換する太陽電池、太陽エネルギーを集めて蒸気タービンを回す太陽発電機がある。
情報関連機器には、光学式文字読取り装置(OCR)、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ファクシミリ、POS(ポス)があり、ホログラフィーは立体ディスプレーのほか情報検索用として利用されている。
光ディスクは、ビデオのほかオーディオディスクや、大容量文書ファイルとしても利用され、光磁気ディスク(MO)は書換え可能な小形・大容量メモリーとして普及している。レーザー光走査と電子写真を組み合わせたレーザープリンターは精細なプリンターとしてワードプロセッサーなどの端末に用いられている。このほか液晶ディスプレーも時計、電卓からテレビやあらゆる携帯用情報端末の表示に用いられている。赤外線利用のテレビなどのリモコン装置、自動焦点カメラなども現れ、光エレクトロニクスはますます身の回りを満たし続けている。
[岩田倫典]
『(財)光産業技術振興協会編『やさしい光技術』(1998・オプトロニクス社)』▽『末田正著『光エレクトロニクス入門』(1998・丸善)』▽『池上徹彦・松原浩司著『光エレクトロニクスと産業』(2000・共立出版)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…オプトエレクトロニクスは,光学と電子工学の境界領域に生まれた新しい学問・技術分野である。光電子工学または光エレクトロニクスと呼ばれることもあり,とくに後者の呼称は一般化する傾向にある。オプトエレクトロニクスをきちんと定義することは,新しい境界領域分野であるためにかなりむずかしいが,一つの考え方として〈電子工学の果たしてきた機能を光学的手段でおきかえる,または光学の果たしてきた機能を電子工学的手段でおきかえるようなデバイスとシステムを対象とする工学の分野〉との定義が提案されている。…
※「光エレクトロニクス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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