日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ドメスティック・バイオレンス
どめすてぃっくばいおれんす
domestic violence
配偶者や恋人等の親密な関係にある者、またはあった者から振るわれる暴力。略称DV(ディーブイ)。英語のドメスティック・バイオレンスということば自体の意味は、「家庭内暴力」であるので、配偶者からの暴力のみならず、親から子供への暴力等も含まれる。日本でもこのように異なった意味に受け止められるおそれがあることから、内閣府では、ドメスティック・バイオレンスということばを正式には使わず、「配偶者からの暴力」ということばを使っている。
DVには、さまざまな形態の暴力があり、内閣府男女共同参画局では「配偶者からの暴力」を、身体的暴力(殴る、蹴(け)るなど)、精神的暴力(大声でどなる、ばかにするなど)、性的暴力(性行為の強制など)ととらえているが、たとえば、神奈川県が策定している「かながわDV防止・被害者支援プラン」では、経済的暴力(生活費を渡さないなど)や社会的隔離(外出や交際の制限など)も含めている。DVは、これらのうち、単独の形態の暴力であることもあるが、多くは何種類かの暴力が重なっていることが多い。また、ある行為が複数の形態に該当することもある。
DV加害者は、年齢、性別、学歴、職種、年収に関係がないといわれている。社会的地位があり、そうとは見えない人でも、DV加害者である場合がある。暴力を振るわれた被害者は、逃げることができないことが多い。その理由として、恐怖感、無力感、複雑な心理(「暴力を振るうのは私を愛しているからだ」と思うなど)、経済的な問題、子供の養育の問題などがあるとされている。
日本では、2001年(平成13)4月にDVの防止および被害者の保護を図ることを目的とする「配偶者暴力防止法」(平成13年法律第31号。DV防止法ともいう)が成立した。
[神尾真知子 2015年6月17日]