家庭生活の安定と児童の健全な成長を目的に1972年に始まった現金給付。現在の仕組みでは、0歳から中学卒業までの子どもが対象。年齢や人数に応じて1人当たり月額1万~1万5千円が支給される。所得制限がある。政府は「次元の異なる少子化対策」で①所得制限の撤廃②対象を高校卒業と同じ「18歳になった後の3月末まで」に拡大③第3子以降は月3万円に増額―に拡充する方針を決めた。拡充後の初支給(2024年10~11月分)は24年12月の予定。
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児童手当法(昭和46年法律第73号)に基づいて、児童を養育している家庭に支給される手当。家庭における生活の安定に寄与し、次代の社会を担う児童の健全な育成および資質の向上に資することを目的としている。児童手当制度は、ほかの社会保障制度や他国の児童手当制度と異なり、(1)全国民を対象にした単一の制度、(2)事業主拠出金の導入、(3)一般児童健全育成施策としての位置づけ、という三つの特徴をもっている。
1940年代から児童手当の必要性が指摘されていたものの、当時はより緊急性の高い施策を優先せざるをえない事情や人口過剰が問題となっていたことから制度化は遅れ、1960年代に入ってようやく具体的な制度設計の議論が始まり、1971年(昭和46)に児童手当法は成立した。
当初は義務教育修了前の児童を含む18歳未満の児童3人以上を監護し、かつこれと一定の生計関係にある者に対して、第3子以降の児童1人につき月額5000円(市町村民税所得割非課税者の場合には7000円)の手当が支給されていた(月額3000円からの段階的拡大)。また所得制限は5人世帯で200万円程度と設定されてスタートした。その後はとくに少子化が問題になる1990年代以降、支給対象児童および年齢が拡大し、支給額は増額、所得制限の強化・緩和、費用負担割合の見直しなどが継続的に行われている。1994年(平成6)には、各種の育児支援サービスや児童の健全育成のための条件整備を行う「児童育成事業」による助成が制度化された。
2007年(平成19)にはようやく3歳未満の支給額が一律1万円、3歳以上小学校修了前の児童は第1子・第2子が5000円、第3子以降が1万円になり(特例給付)、所得制限限度額は夫婦と児童2人世帯の場合、574万円程度(会社員等は646万円程度)となった。2009年に政権交代によって誕生した政府(当時の民主党)は、選挙公約であった「子ども手当」を2010年4月から実施し、これにより月額1万3000円を、0歳以上15歳に達する最初の年度末まで、所得制限なく支給することとなった。これにより児童手当は廃止された。その後子ども手当は、翌2011年10月から2012年3月までは3歳未満と小学生までの第3子以降が月額1万5000円、3歳から小学生の第2子までと中学生は月額1万円が支給されることになった。しかし、東日本大震災の復興財源の確保を優先するため、2012年3月で子ども手当は廃止されることとなった。
子ども手当の廃止に伴い、2012年4月「児童手当法の一部を改正する法律」が施行され、新たな児童手当制度が始まった。支給対象は中学校修了までの国内に住所のある児童。受給資格者は監護生計要件を満たす父母などで、児童養護施設に入所している児童については、施設の設置者等が受給資格者となる。また、受給対象には所得制限が設けられる(所得制限は同年6月分から適用)。支給額(月額)は、3歳未満が一律1万5000円、3歳~小学校修了までは第1子、第2子が1万円、第3子以降が1万5000円、中学生は一律1万円。所得制限限度額は夫婦と児童2人の場合、年収ベースで960万円。ただし当分の間の特例給付として、所得制限以上の児童にも一律5000円が支給される。なお、保育料は直接徴収が可能で、学校給食費等は本人の同意により手当から納付することが可能である(いずれも自治体の判断により実施)。
[中村強士 2024年1月18日]
『児童手当制度研究会監修『児童手当法の解説』5訂版(2013・中央法規出版)』
児童手当制度は児童を養育している者に現金給付をすることにより,家庭における生活の安定に寄与するとともに,次代の社会を担う児童の健全な育成と資質の向上に資することを目的とする制度である。児童手当は社会保障制度の重要な一部門を占めるものであり,企業福祉の一環として現在多くの民間企業で支給されている家族(扶養)手当とはその性格を異にする。児童手当は,一方では両親が児童養育の責任を果たすための補助として,他方では児童の育成に社会が積極的に参加し,新しい責任を引き受けたものとしてみられるべきである。国の将来は現在の児童により決まる。とくに日本の場合,今後加速化する少子高齢社会への対応策として児童手当制度のもつ社会的意義は大きい。
日本の児童手当制度は1972年1月から実施された。制度発足時には,第3子以降の義務教育終了前の児童を対象として月額3000円を支給する制度としてスタートした。〈小さく産んで大きく育てる〉ことをねらいとして創設され,制度のいっそうの拡充が期待されていたが,財政再建の波に直撃されて以来,児童手当制度は厳しい状況におかれてきた。
81年の臨時行政調査会第1次答申において,制度の見直しの要請がなされ,これを受けて翌82年6月からは行革関連特例法により,所得制限を強化すること,およびこれにより手当を受給できなくなる被用者等に対し,全額事業主負担による特例給付を実施する措置が設けられた。
86年6月には,支給対象を第2子に拡大するが,支給期間は従来の〈義務教育終了前〉を〈義務教育就学前〉に大幅短縮する改正が行われた。
93年1月には,第1子から支給し,手当額を引き上げるが,支給期間はカットし,3歳未満とする改正が行われた。
さらに95年には,夫婦共働き世帯の増加などに対応した各種の育児支援サービス等が大幅に拡充され,そのための財源を確保する措置を講じる改正が行われた。
現行の児童手当制度の仕組みは次のとおりである。支給要件は,(1)日本国内に住所を有すること,(2)3歳未満の児童を監護し,かつ,その児童と一定の生計関係にあること,(3)前年の所得が一定額に満たないこと(1997年6月分以降の児童手当については,前年の所得が209.6万円(扶養親族2人の場合)以上である者は受給できない)。支給額は,第1子および第2子については月額5000円,第3子以降の児童1人につき月額1万円である。費用負担は,被用者分については,事業主10分の7,国10分の2,都道府県10分の0.5,市町村10分の0.5,非被用者分については,国6分の4,都道府県6分の1,市町村6分の1,特例給付分については,事業主10分の10である。児童手当の実施状況をみると,96年2月末現在の支給対象児童数は228万人であり,95年度の支給総額は1609億円である。
95年現在,世界の81ヵ国において児童手当が実施されている。児童手当の受給資格要件としては,大多数の国が児童の年齢のみを規定している。年齢要件については,ほとんどの国の年齢上限は16~18歳であり,学校教育を継続する場合,または職業訓練中,または障害のある場合には年齢上限は延長される。児童手当の受給に所得制限を設けている国はきわめて少ない。
執筆者:都村 敦子
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(中谷茂一 聖学院大学助教授 / 2007年)
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…日本には第1次大戦末期に移入され,第2次大戦後の電産型賃金体系の実施以来,急速に普及したが,日本の家族手当は(1)のタイプ,しかも個別企業の支給する手当が基本であり,(2)が主流の欧米諸国と著しい対照をなす。社会保障としては,ようやく1972年1月に児童手当が発足したが,支給が第3子以降の子女に限定されるなど,まだきわめて不十分な現状である。日本の家族手当は,このような社会保障の未発達を前提とし,低賃金を補うものとして賃金体系に重要な位置を占めてきた。…
※「児童手当」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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