党生活者(読み)トウセイカツシャ

デジタル大辞泉 「党生活者」の意味・読み・例文・類語

とうせいかつしゃ〔タウセイクワツシヤ〕【党生活者】

小林多喜二中編小説未完。昭和8年(1933)、著者官憲拷問で死亡した直後、かなりの部分削除伏字とし、「転換時代」の題で「中央公論」誌に掲載された。戦後ゲラ刷り草稿もとに完全原稿が復元された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「党生活者」の意味・わかりやすい解説

党生活者
とうせいかつしゃ

小林多喜二(たきじ)の中編小説。1933年(昭和8)4、5月『転換時代』の仮題で『中央公論』に発表。第二次世界大戦前は削除と伏せ字が多く題名も禁ぜられたが、戦後、完全に復原された。作者虐殺により前編で中絶。満州事変直後の軍需工場内の共産党細胞の活動を、主人公「私」の動向を中心に描く。個人的生活のいっさいをなげうって党活動に専心する辛苦がリアルに伝わり、母との別れの場面も濃い情愛が流れているが、女性同志の闘争方法のゆがみや、革命家における愛情のあり方など、「個人的な生活が同時に階級的生活である」という共産主義的人間像の形象に問題を残し、戦後の「“政治と文学論争」の焦点ともなった。

小笠原克

『『蟹工船・党生活者』(角川文庫)』

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