入質(読み)いれじち

精選版 日本国語大辞典 「入質」の意味・読み・例文・類語

いれ‐じち【入質】

〘名〙
中世における質権の設定方法の一つ。担保物件を債権者に引き渡す質。動産の場合は帰属質で、不動産の場合は土地からの収益は債権者のものとなり、これが利息とされて債務者は利息の支払いを必要としなかった。⇔見質(げんじち)
新編追加‐永仁五年(1297)六月一日「於見質者、不沙汰、至入質者、可券契矣」
② 質に入れること。また、その品物
[補注]②の意としては、「伎・天衣紛上野初花河内山)‐序幕」に、「丁稚長松入質(イレビチ)片脇へ積み上げ質札を読上げて居る」がある。

にゅう‐じち ニフ‥【入質】

〘名〙 質に入れること。質入れ
※苦の世界(1918‐21)〈宇野浩二〉四「その当時しばしば金一円でやりとりしてゐたやつを、それを入質(ニフジチ)したことであった」

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デジタル大辞泉 「入質」の意味・読み・例文・類語

にゅう‐しち〔ニフ‐〕【入質】

[名](スル)質屋に品物を預け入れること。質入れ。「着物入質する」

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普及版 字通 「入質」の読み・字形・画数・意味

【入質】にゆう(にふ)ち

人質を入れる。〔史記、韓世家〕何ぞ韓の爲に質子(ちし)を楚に求めざる。楚王、聽(ゆる)して質子を韓に入れなば則ち、~必ず韓は秦・楚に合せりと以(おも)はん

字通「入」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「入質」の意味・わかりやすい解説

入質
いれじち

今日の占有質に相当する中世法上の用語質物の占有を債権者に移動するところから,この名が生じたといわれている。この系統に属する質は,近世法においては,一般に質入れと称せられた。

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世界大百科事典(旧版)内の入質の言及

【質】より

…この点から質に関する社会慣行は複雑化,多様化せざるをえなかった。(2)貸借契約の場合 第1に不動産の質入れには,入質と見質の別があった。入質は契約と同時に質地の占有が貸主に移転するもので,これに2形態あった。…

【本銭返し】より

…この形態は,不動産の解除条件付売渡しである本銭返しと矛盾する元利消却質としての年季売と区別することは困難であるが,当時これも本銭返しとした例がみられる。 このように(3)(4)の本銭返しは,入質(いれじち)と実質的に区別しがたく,本銭返しは売買と質入れの中間形態とされている。この本銭返しの本質が売買か質入れかについては議論の分かれるところであるが,古代の土地売券に使用される〈永売(えいうり)〉も現在の売ると同じではなく,請戻し,買戻しが前提とされていること,本銭返し,年季売などの形態が,中世の関東・東北,九州などの諸地方において一般的土地売却として存在したことなどからいえば,本銭返しは,歴史的には質入形式から売買形式が分離する過程の,なお両者の未分離状態のもとで生まれた形態と位置づけることが可能であり,農民の土地売却形態としては,ひろく近世にも継承された。…

※「入質」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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