八仙(読み)ハッセン

デジタル大辞泉 「八仙」の意味・読み・例文・類語

はっ‐せん【八仙】

中国漢代の八人の仙人鍾離しょうり張果老韓湘子かんしょうし李鉄拐りてっかい曹国舅そうこくきゅう呂洞賓りょどうひん藍采和らんさいか何仙姑かせんこ民間伝承で親しまれ、画題とされる。→飲中八仙
崑崙こんろん山の八仙人の意》雅楽。高麗楽こまがく高麗壱越いちこつ調の小曲。舞は四人舞で、鶴が舞い遊ぶ姿を表す。崑崙八仙ころはせ。くろはせ。鶴舞。

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精選版 日本国語大辞典 「八仙」の意味・読み・例文・類語

はっ‐せん【八仙】

  1. [ 一 ] 杜甫の「飲中八仙歌」にうたわれた、唐代の八人の酒仙。すなわち、賀知章・汝陽王李璡(しん)・李適之・崔(さい)宗之・蘇晉・李白・張旭・焦遂。
    1. [初出の実例]「八仙は皆酒酔の芸尽し」(出典:雑俳・菊丈評万句合(1757))
  2. [ 二 ] 淮南王劉安(りゅうあん)高弟の八人の道士。蘇非・季上・尤呉(ゆうご)・陳由・伍被・雷被・毛被・晉昌の八人。
    1. [初出の実例]「竝三曜、以終始、共八仙、而相対」(出典:三教指帰(797頃)中)
    2. [その他の文献]〔沈炯‐林屋館碑〕
  3. [ 三 ] 漢の鍾離(しょうり)・張果老・韓湘子(かんしょうし)李鉄拐(りてっかい)曹国舅(そうこくきゅう)呂洞賓(りょどうひん)藍采和(らんさいか)何仙姑(かせんこ)の八人。中国の民間伝承や文学で親しまれ、元の頃からはしばしば画題となる。
    1. [初出の実例]「実に八仙も斯くと賀の客」(出典:雑俳・俳諧觿‐八(1786))
  4. [ 四 ] ( 崑崙山の八仙人の意 ) 雅楽の曲名。右方。高麗壱越調、新楽。小曲。四人舞。とがった口の先に鈴をつけた青い仮面に別甲(べつかぶと)をつけて舞う。仙人を鶴化したものといわれる。崑崙八仙。くろはせ。ころはせ。鶴舞。〔舞楽図説(1905)〕
    1. 八仙<b>[ 四 ]</b>〈宗達画舞楽図〉
      八仙[ 四 ]〈宗達画舞楽図〉

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改訂新版 世界大百科事典 「八仙」の意味・わかりやすい解説

八仙 (はっせん)
Bā xiān

中国,民間伝説のなかの8人の仙人,呂洞賓,李鉄拐(りてつかい)(鉄拐李),漢鍾離(鍾離権),張果老,藍采和,曹国舅(そうこくきゆう),韓湘子,何仙姑をいう(この順序は一定していない)。何仙姑は女仙。この8人は,個別には,すでに唐・宋の記載にその名が現れているが,八仙グループとして定着するのは,元から明になってからのこと。元代の戯曲ではまだ何仙姑が宋の徐神翁と入れかわっている作品もある。八仙には,実在の人もあれば,架空の人もあり,さらにそれが伝説化して伝えられてきたため,伝記については多様で判然としないものが多い。それらの伝えによると,呂洞賓は名は巌,五代の人,漢鍾離について得道,呂純陽真人と称された。全真教の祖師の一人。李鉄拐は北宋の劉跛子と南嶽聖寿観の跛仙が結合し,さらに元代に岳孔目および李玄の話が加わったもの。漢鍾離は北宋のころから語られるようになった。これも全真教の祖師の一人とされる。張果老は張果の尊称で,道号は通玄先生,唐の玄宗に重んじられた方士。藍采和は道士で,南唐の城市を破衣をまとい酒に酔って歌をうたい乞食して歩いたという。曹国舅は北宋の仁宗の曹皇后の弟。韓湘子は韓湘の尊称で,唐の韓愈の姪孫(てつそん)(おいの子)。韓愈を悟道に至らしめたといわれる。何仙姑は北宋の仁宗の時の永州の女(唐の武則天のころの広州の増城県の女ともいわれる),吉凶を予言する能力があったといわれる。八仙はみな道教の仙人で無病息災,延生益寿をもたらすものとして信仰され,各種の演劇に取り入れられて,祝宴の席に上演されたほか,小説,絵画,彫刻,陶磁器の図案などにも取り入れられ,吉祥を意味するものとして珍重された。杜甫の詩《飲中八仙歌》や唐末五代の《蜀の八仙》の八仙は,これと別である。
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八仙 (はっせん)

雅楽の舞楽の曲名。高麗(こま)楽の高麗壱越(いちこつ)調。四人舞で文(ぶん)ノ舞(平舞)。《崑崙(こんろん)八仙》ともいう。別名を《鶴舞》。鶴の一群大空に飛びかう姿を舞にしたというが,由来は不明。番舞(つがいまい)は《北庭楽》。冠鶴をかたどった暗緑色の面をつける。この面の口元には金色の木彫の鈴が垂れている。別甲をかぶり,紺地に五彩の鯉を刺繡(ししゆう)し絹糸の網でおおった短い袍を着た別装束で舞う。演奏次第は,〈高麗小乱声〉-〈高麗乱声〉(舞人登場)-〈小音取〉-破-急。破と急が当曲舞。急を奏するうちに舞人は退場する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「八仙」の意味・わかりやすい解説

八仙
はっせん

雅楽の曲名。「崑崙八仙(ころばせ)」ともいう。右方高麗(うほうこま)楽に属す。崑崙(こんろん)山に住むという鶴(つる)の仙人(仙禽(せんきん))が8人、下界に降りきたって舞うありさまを表したもの。文の舞で四人舞。高麗壱越(こまいちこつ)調。高麗四拍子の「破」と唐(から)拍子の「急」の2章からなる。「急」では、舞人が互いに袖(そで)をとり、輪になって鶴の群遊する情景を表す部分がある。ここから別名「鶴舞(つるまい)」ともいう。面には口先に金色の鈴がつけられ、舞うごとに鳴るその音が鶴の泣き声を模すという。頭上に鶴の冠を表す色彩鮮やかな扇形の甲(かぶと)をつける。八仙専用の特殊な袍(ほう)には、鯉(こい)の泳ぐ姿が刺しゅうされる。曲は「高麗小乱声(こらんじょう)」ののち舞人が登台し、「高麗乱声」「小音取(こねとり)」「破」「急」の順で奏す。番舞(つがいまい)は『抜頭(ばとう)』『北庭楽』『蘇莫者(そまくしゃ)』など。

[橋本曜子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「八仙」の意味・わかりやすい解説

八仙
はっせん
Ba-xian

中国に伝承される8人の仙人。異説もあるが,普通には,鍾離権,張果老,韓湘子,李鉄拐 (りてっかい) ,曹国舅 (そうこくきゅう) ,呂洞賓の6人に,藍采和 (らんさいわ) ,何仙姑 (かせんこ) の2女仙を加えていう。

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