中国,民間伝説のなかの8人の仙人,呂洞賓,李鉄拐(りてつかい)(鉄拐李),漢鍾離(鍾離権),張果老,藍采和,曹国舅(そうこくきゆう),韓湘子,何仙姑をいう(この順序は一定していない)。何仙姑は女仙。この8人は,個別には,すでに唐・宋の記載にその名が現れているが,八仙グループとして定着するのは,元から明になってからのこと。元代の戯曲ではまだ何仙姑が宋の徐神翁と入れかわっている作品もある。八仙には,実在の人もあれば,架空の人もあり,さらにそれが伝説化して伝えられてきたため,伝記については多様で判然としないものが多い。それらの伝えによると,呂洞賓は名は巌,五代の人,漢鍾離について得道,呂純陽真人と称された。全真教の祖師の一人。李鉄拐は北宋の劉跛子と南嶽聖寿観の跛仙が結合し,さらに元代に岳孔目および李玄の話が加わったもの。漢鍾離は北宋のころから語られるようになった。これも全真教の祖師の一人とされる。張果老は張果の尊称で,道号は通玄先生,唐の玄宗に重んじられた方士。藍采和は道士で,南唐の城市を破衣をまとい酒に酔って歌をうたい乞食して歩いたという。曹国舅は北宋の仁宗の曹皇后の弟。韓湘子は韓湘の尊称で,唐の韓愈の姪孫(てつそん)(おいの子)。韓愈を悟道に至らしめたといわれる。何仙姑は北宋の仁宗の時の永州の女(唐の武則天のころの広州の増城県の女ともいわれる),吉凶を予言する能力があったといわれる。八仙はみな道教の仙人で無病息災,延生益寿をもたらすものとして信仰され,各種の演劇に取り入れられて,祝宴の席に上演されたほか,小説,絵画,彫刻,陶磁器の図案などにも取り入れられ,吉祥を意味するものとして珍重された。杜甫の詩《飲中八仙歌》や唐末五代の《蜀の八仙》の八仙は,これと別である。
執筆者:小川 陽一
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雅楽の曲名。「崑崙八仙(ころばせ)」ともいう。右方高麗(うほうこま)楽に属す。崑崙(こんろん)山に住むという鶴(つる)の仙人(仙禽(せんきん))が8人、下界に降りきたって舞うありさまを表したもの。文の舞で四人舞。高麗壱越(こまいちこつ)調。高麗四拍子の「破」と唐(から)拍子の「急」の2章からなる。「急」では、舞人が互いに袖(そで)をとり、輪になって鶴の群遊する情景を表す部分がある。ここから別名「鶴舞(つるまい)」ともいう。面には口先に金色の鈴がつけられ、舞うごとに鳴るその音が鶴の泣き声を模すという。頭上に鶴の冠を表す色彩鮮やかな扇形の甲(かぶと)をつける。八仙専用の特殊な袍(ほう)には、鯉(こい)の泳ぐ姿が刺しゅうされる。曲は「高麗小乱声(こらんじょう)」ののち舞人が登台し、「高麗乱声」「小音取(こねとり)」「破」「急」の順で奏す。番舞(つがいまい)は『抜頭(ばとう)』『北庭楽』『蘇莫者(そまくしゃ)』など。
[橋本曜子]
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