日本大百科全書(ニッポニカ) 「公共職業訓練校」の意味・わかりやすい解説
公共職業訓練校
こうきょうしょくぎょうくんれんこう
職業能力開発促進法(1985年制定・施行。旧法は1958年制定、1969年ならびに1978年改正の職業訓練法)に基づいて設置されている公共の職業訓練施設をさす。
2021年(令和3)4月時点で、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が運営する国立の職業能力開発施設としては、職業能力開発促進センター(ポリテクセンター)46か所、職業能力開発短期大学校(ポリテクカレッジ)13校、職業能力開発大学校(ポリテクカレッジ)10校、障害者職業能力開発校13校(うち11校は運営を都道府県に委託)であり、都道府県が設置・運営する職業能力開発施設としては、職業能力開発校147校、職業能力開発短期大学校15校、障害者能力開発校6校である。なお、同法により、職業能力開発総合大学校(職業訓練指導員の養成や職業訓練に関する調査研究等を行う)1校が設置されている。
職業能力開発校は、新規学卒者、在職者や離転職者、失業者に対して、職業に必要な技能・知識を習得させるための教育訓練機関である。教育訓練期間は、短期課程と長期課程があり、短期課程は半年以下、長期課程は1年間である。具体的なコース名を例示すると、電気工事、建築塗装、インテリア、設備保全、医療事務、グラフィック印刷、介護サービスなど多様なコースが設置されている。職業能力開発促進センター(ポリテクセンター)は、以上のうちの短期課程のみを実施している。
職業能力開発短期大学校(ポリテクカレッジ)は、2年制の工業短大に相当する能力開発機関であり、高度な知識と技能・技術を兼ね備えた実践技術者(テクニシャン・エンジニア)の育成を目的として、主として高校卒を対象とした2年制の教育課程を用意している。建築科、電子情報技術科、生産技術科、電気エネルギー制御科などが設置されている。
職業能力開発大学校(ポリテクカレッジ)には、専門課程と応用課程があり、それぞれ2年間の教育訓練課程である。専門課程は職業能力開発短期大学校と同等の課程であり、応用課程は専門課程修了者および職業能力開発短期大学校の修了者を主として対象としており、専門課程あるいは職業能力開発短期大学校の2年間とあわせると、4年制の工業大学にほぼ相当する職業能力開発機関である。高度で専門的かつ応用的な技能・知識を有する技術者(エンジニア)となるために必要な基礎的な技能・知識を授ける施設である。
[笹島芳雄]
『人材開発研究会編『解説日本の職業能力開発』(2009・労働新聞社)』▽『厚生労働省編『厚生労働白書』各年版(ぎょうせい)』