日本大百科全書(ニッポニカ) 「公益事業会計」の意味・わかりやすい解説
公益事業会計
こうえきじぎょうかいけい
accounting for public utilities
国民の日常生活にとって基本的なサービスを提供するなど、公共の利益のために事業を経営する組織体に必要な会計制度や会計システムをいう。このような公益事業には、広義においては、国家・地方自治体や公庫、公社等の特殊法人、その他の公益法人などにより運営される事業も含まれるが、会計を基盤とした公共料金規制の対象としては、民間の私企業という経営形態による公益事業をいうことが多い。公益事業学会における公益事業の定義では、電気、ガス、水道、鉄道、軌道、自動車道、バス、定期船、定期航空、郵便、電信電話、放送等の諸事業が列挙されている。
一般企業の会計については、商法(会社法)、金融商品取引法、税法等が企業共通のものとして等しく適用される。しかし、公益事業を営む事業体においては、当該事業の運営において独占性(地域独占や事業独占など)を留保されていることが多く、サービス提供の料金設定が国民生活に多大な影響を及ぼすことから、一般的には公共料金規制が実施される。公共料金は、基本的に事業運営による原価を基準にして設定されることが適当と考えられていることから、経常的な会計制度による原価計算が不可欠である。このような理由から、公益事業に対しては、一般の会計基準の枠内にあるものでありながら、その特殊性を配慮した事業法の規定による会計規則が制定される。電気事業、ガス事業、鉄道事業、電気通信事業等のそれぞれの会計規則がそれにあたる。これらの会計を一般に公益事業会計という。公益事業会計による会計情報は、料金算定根拠として機能するばかりでなく、経営効率化やコスト縮減の促進、セグメント別業績管理(業務種類別、地域別、顧客層別などの分類別による業績の管理)、ユニバーサル・サービス・コスト(全国民が平等にサービスを受けられるようにするための費用)やその料金の算定資料などにも多面的に活用される。
[東海幹夫]