公庫(読み)こうこ

精選版 日本国語大辞典 「公庫」の意味・読み・例文・類語

こう‐こ【公庫】

〘名〙
① 国家の庫(くら)。国家の財。国庫。
※明六雑誌‐一六号(1874)西学一斑・五〈中村正直訳〉「又公庫を充足し、救助に欠ざらしめんことを要す」 〔宋史‐任伯雨伝〕
② 公共的、経済政策的目的のための融資を行なう全額政府出資の金融機関国民生活金融公庫住宅金融公庫農林漁業金融公庫中小企業金融公庫など。
※海辺の光景(1959)〈安岡章太郎〉「公庫の役人と知り合ひだといふ男は」

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デジタル大辞泉 「公庫」の意味・読み・例文・類語

こう‐こ【公庫】

国の経済政策社会政策を実現するために融資を行う全額政府出資の金融機関国民生活金融公庫中小企業金融公庫農林漁業金融公庫などは平成20年(2008)の政府系金融機関改革によって株式会社日本政策金融公庫に統合された。また、住宅金融公庫は平成19年(2007)に住宅金融支援機構に改組された。
[類語]銀行金庫バンク

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「公庫」の意味・わかりやすい解説

公庫
こうこ

比較的中小規模の政府金融機関(全額政府出資の金融機関)。公庫はそれぞれの特殊立法によって設立されており、役員の任免についても政府の権限が銀行より強くなっている。また、銀行が経営について比較的自主的に決定できるのに対し、公庫は事業計画などについて主務大臣の認可を受けることとなっている。政府系金融機関はそもそも国の政策として必要な業務を担っているのであり、また、多額の信用供与を行う機関なので、当該機関の予算は国会の議決対象となっている。したがって、資金調達についても、「財政融資資金財投機関債等を適切に組み合わせた調達を基本とし、ALM管理(資産・負債の総合管理)や資金調達コストの観点から検討を行う」ことが2006年(平成18)の「政策金融改革に係る制度設計」で明記された。

 1999年(平成11)までの公庫には金融公庫と単に公庫といわれているものとの2種類があった。

 金融公庫は、政府出資金と政府資金の借入金や政府保証債の発行によって調達した資金を合して、それぞれの目的に応じて融資することを主業務とするものであり、中小企業金融公庫、国民金融公庫農林漁業金融公庫、沖縄振興開発金融公庫公営企業金融公庫があった。これら金融公庫の機能をみると、中小企業金融、農林漁業金融、社会開発金融、地方公営企業金融など、民間金融だけではファイナンシャル・ギャップを生じやすい分野への専門的金融を行うことを中心としていた。しかし、2005年に出された「政策金融改革の基本方針」に基づき、2006年の「政策金融改革に係る制度設計」に沿って統廃合が行われ、中小企業金融公庫、国民金融公庫、農林漁業金融公庫は、国際協力銀行(国際金融部門)とともに、2008年10月日本政策金融公庫(日本公庫)にそれぞれ事業継承され、統合された(国際協力銀行は2012年4月に日本公庫から分離独立した)。また、公営企業金融公庫は2008年10月地方共同法人地方公営企業等金融機構に事業承継され、2009年6月に地方公共団体金融機構に改組された。

 他方、単に公庫とよばれているものも1999年時点では、北海道東北開発公庫と中小企業信用保険公庫があった。前者は北海道および東北地方の産業の振興開発を促進するために長期資金の投融資を行うことを主機能とし、後者は各都道府県の信用保証協会が行う中小企業者の債務の保証に係る保険および同協会に対する貸付を行うことを主業務としていた。しかし、北海道東北開発公庫は1999年10月日本政策投資銀行に事業承継され、中小企業信用保険公庫も1999年7月中小企業総合事業団に事業承継された後、2004年7月中小企業金融公庫に事業承継され、その後、政策金融改革によって、現在は日本公庫に事業継承されている。

[前田拓生]

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百科事典マイペディア 「公庫」の意味・わかりやすい解説

公庫【こうこ】

中小企業,農林漁業,住宅建設,庶民金融などを対象として貸付け,出資,債務保証などを行う特殊法人の一類型。資本金は全額政府出資で,理事以外の役員は政府が任命する。国民金融公庫住宅金融公庫農林漁業金融公庫中小企業金融公庫中小企業信用保険公庫北海道東北開発公庫公営企業金融公庫,環境衛生金融公庫,沖縄振興開発金融公庫の9公庫があるが,1999年7月中小企業信用保険公庫は中小企業事業団などと統合され中小企業総合事業団(2004年中小企業基盤整備機構)となり,また1999年10月から,国民金融公庫と環境衛生金融公庫は統合されて国民生活金融公庫に,北海道東北開発公庫は日本開発銀行と統合されて日本政策投資銀行に改編された。中小・零細企業や特定産業・特定地域などの保護育成を中心とした政策的な事業内容であるため,金庫よりも国家機関の性格が強く,その会計は国会の承認が必要である。
→関連項目政府関係機関政府金融機関

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改訂新版 世界大百科事典 「公庫」の意味・わかりやすい解説

公庫 (こうこ)

100%政府出資の政府金融機関で,国民生活金融公庫住宅金融公庫,農林漁業金融公庫,中小企業金融公庫,公営企業金融公庫,沖縄振興開発金融公庫がある(2005年末現在)。これらの公庫は,おもに財政投融資資金などの政府資金を,それぞれの公庫が担当する特定分野に低利で貸し付け,政府が行政目的を遂行する一助にされる。民間金融機関の機能を補完する金融業務をおもな事業目的とする点で公社・公団と異なる。各公庫は,業務計画,業務方法などで主務官庁の規制を受けると同時に,予算の審議,決算の報告を通じて国会のコントロールも受けている。また〈公庫の予算及び決算に関する法律〉(1951公布)により予算・決算は規制を受けており,利益金は国庫に納付しなければならない。経営機関としては,総裁(あるいは理事長),副総裁(副理事長),理事,監事があるが,その選任は副総裁(副理事長)を除き主務大臣が行う。日本輸出入銀行(現,国際協力銀行)と日本開発銀行(現,日本政策投資銀行)も,公庫と同じく100%政府出資の銀行であり,その性格も公庫とほぼ同じであるが,事業計画および事業の遂行にあたっては,公庫の場合よりも政府からの独立性が保たれている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「公庫」の意味・わかりやすい解説

公庫
こうこ

全額政府出資の金融機関特殊法人の一種。中小企業,農業,住宅建設,庶民金融などの特殊部門へ低利,長期の融資を行なう。理事の任命や,事業および資金計画などの業務運営に関して主務大臣の認可が必要とされるなど,国の強い統制に服する。かつては国民生活金融公庫(→国民金融公庫),住宅金融公庫中小企業金融公庫農林漁業金融公庫公営企業金融公庫などがあったが,政策金融改革による組織改編などを経て,2015年現在,沖縄振興開発金融公庫のみが存在する。財務・会計については「沖縄振興開発金融公庫の予算及び決算に関する法律」が規定する。

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普及版 字通 「公庫」の読み・字形・画数・意味

【公庫】こうこ

官庫。

字通「公」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の公庫の言及

【公企業】より

… 公企業の第2の形態に公共法人がある。これには,国民金融公庫,住宅金融公庫,農林漁業金融公庫,中小企業金融公庫,日本輸出入銀行,日本開発銀行などの公庫および銀行,住宅・都市整備公団,日本道路公団,水資源開発公団,日本鉄道建設公団,新東京国際空港公団,本州四国連絡橋公団などの公団および各種の事業団がある(事業団については,政府の補助金を支出する機関としての性格をもっているものも多く,公企業に含めるかどうかについては異論がある)。これらのうち,公庫はいずれも政府が100%出資している法人であり,公団は政府や自治体および公社が共同出資している法人である。…

【特殊法人】より

…なお〈公社・公団〉の項目を参照されたい。(2)公庫 国民金融公庫,住宅金融公庫等9公庫があり,いずれも全額政府出資であり,政策金融を担当する。〈公庫の予算及び決算に関する法律〉が適用され,予算・決算について国会のコントロールがある。…

※「公庫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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