内部磁場(読み)ナイブジバ

化学辞典 第2版 「内部磁場」の解説

内部磁場
ナイブジバ
internal magnetic field

原子核核磁気モーメントに作用する磁場をいう.内部磁場は,その原子核のまわりの電子がスピン角運動量または軌道角運動量をもつ場合につくられる.すなわち,内部磁場は,電子の軌道がs状態であるときは,電子のスピンによるフェルミ相互作用によるが,p,dなどの状態のときは,スピンに伴う磁気モーメントの古典的な双極子相互作用によって生じる.しかし,鉄属などのようにd電子をもつ磁気的原子では,元来はスピンが打ち消し合って閉殻をつくっていた内殻電子が,d電子によって磁気分極を起こし,これがd電子の磁気モーメントとは反対の向きの内部磁場をつくる.希土類金属の原子では,電子の軌道運動からの寄与も重要である.さらに金属の場合は,伝導電子からの寄与もある.内部磁場の値はその原子核が含まれている物質によって異なるが,一般には非常に大きい.たとえば,Feではほぼ2.5×107 A m-1 である.内部磁場は核磁気共鳴吸収やメスバウアー効果によって直接測定され,また極低温における比熱容量の解析からも求めることができる.内部磁場の測定によって,原子核の知識が得られるだけでなく,物質の電子構造の情報も与えられる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「内部磁場」の意味・わかりやすい解説

内部磁場
ないぶじば
internal magnetic field

一般に物質中の磁場をさすが,通常広く用いられている意味は,磁性イオンの原子核がみる磁場である。この内部磁場の原因として,電子スピン核スピンの間のフェルミ相互作用,双極子相互作用,内殻電子の磁気分極による相互作用などがある。希土類金属イオン,遷移金属イオンでは 100~1000kOeという大きな内部磁場が観測されており,その場合,内殻電子の磁気分極からの寄与が大きいことがわかっている。内部磁場は核磁気共鳴メスバウアー効果γ線偏極,低温比熱などにより観測される。

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