改訂新版 世界大百科事典 「内部金融外部金融」の意味・わかりやすい解説
内部金融・外部金融 (ないぶきんゆうがいぶきんゆう)
internal finance, external finance
個人,企業などの経済主体が必要な資金を入手するには,まず,その経常的収入によって賄うか,あるいは預金の引出しや株式の売却のように,保有する資産を処分することによって調達する方法がある。このように,資金調達の源泉が当該経済主体の内部に求められる場合を内部金融,もしくは自己金融と呼ぶ。これとは対照的に,直接金融および間接金融方式(〈直接金融・間接金融〉の項参照)のように,資金調達の源泉がその経済主体の外部に求められる場合を外部金融と呼ぶ。また,内部金融,外部金融によって調達された資金をそれぞれ内部資金,外部資金と呼ぶことがある。企業の資金調達方式についてみると,内部金融に属するものとしては,企業内部に留保され蓄積された利益である内部留保(社内留保とも呼ぶ)を用いる方法と,減価償却積立金を設備資金や運転資金などに用いる方法とが代表的である。これに対し,企業の外部金融の例としては,金融機関からの借入金,株式・社債の発行,企業間信用(売掛金,買掛金)などによる方法がある。
日本の法人企業部門全体の資金調達方式は,アメリカやイギリスなどと比べ,外部金融のウェイトが高く,したがって内部金融のウェイトが小さいという特色が見いだされる。とくに,外部金融による資金調達のなかでも,金融機関借入金が圧倒的な比率を占めているのに対し,株式,社債の割合が小さい点が日本の企業金融の大きな特色となっている。しかし1975年以降,法人企業部門の資金不足の相対的縮小と大企業を中心とする銀行借入依存度の低下,さらには企業のコスト意識の高まりを反映して,外部金融比率は徐々に低下する傾向にある。また,株式時価発行や転換社債の発行が活発化しているように,有価証券形態での資金調達が増大しているのも近時の特色である。
執筆者:古川 顕
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報