直接金融間接金融(読み)ちょくせつきんゆうかんせつきんゆう(その他表記)direct finance,indirect finance

改訂新版 世界大百科事典 「直接金融間接金融」の意味・わかりやすい解説

直接金融・間接金融 (ちょくせつきんゆうかんせつきんゆう)
direct finance,indirect finance

資金貸借取引である金融活動においては,収入を超えて支出を行うような赤字主体(資金不足主体)が存在すると同時に,他方では収入が支出を上回る黒字主体(資金余剰主体)の存在することが不可欠である。この黒字主体から赤字主体へと資金が移転する過程に注目して,直接金融と間接金融区別がなされる。すなわち直接金融とは,企業や政府などの赤字主体が不足資金を調達するために発行する株式,国債などを黒字主体が直接購入する形で資金が移転する方式である。これに対し間接金融とは,銀行が個人などの預金によって得た資金を企業に貸し出すように,黒字主体と赤字主体の間に金融仲介機関(普通銀行,相互銀行,信用金庫信用組合,保険会社,投資信託会社などの金融機関であることが多い)が介在し,それを通じて資金が融通される方式である。

 これら二つの金融方式には次のような機能的特色がある。すなわち,直接金融は,借入額,利子率,期間などの借入条件をあらかじめ定めた規格化された証書を売買するという市場取引の性格が強いのに対し,間接金融は,貸手借手が借入額,利子率,期間などをお互いの交渉によって決めるという相対(あいたい)取引の性格が強い。このため,前者はどちらかといえば大口取引に向いているが,後者は大口取引に加えて中小零細企業や個人など小口の資金取引にも適している。

 ところで,日本の経済各部門の資金調達方法をみると,間接金融によるものが支配的であり,このことが日本の金融構造の大きな特色であるとされている。ちなみに,日本の金融機関(公的金融部門を含む)の貸出しおよび有価証券投資の合計を間接金融とし,これの法人企業,個人,公共部門の資金調達総額に占める比率をみると,1965年以降現在に至るまで,ほぼ90%前後で推移している。このように,間接金融のウェイトは圧倒的に高いけれども,ただ75年以降についてみると,間接金融の構成において次のような変化がみられる。すなわち,まず第1に,金融機関借入金の比重が低下し,代わって有価証券の比重が増大している。間接金融のウェイトが目立って変化していないにもかかわらずこうした変化がみられるのは,財政赤字の急速な拡大により大量発行された国債が金融機関を中心に引受け消化されてきた事実による。第2に,間接金融を民間金融機関を経由した資金の流れと,公的金融(郵便貯金,簡易保険・年金,政府金融機関)を経由した資金の流れに区分すると,1973年以降,前者は低下し,後者は上昇する傾向が認められる。これを資金調達の面からみると,主として,都市銀行のシェア・ダウン,郵便貯金のシェア・アップに対応し,資金運用の面からみると,法人企業の投資減退,財政投融資の規模拡大という事実に対応する。
内部金融・外部金融
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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