ある企業が他の企業から財貨・サービスを購入しながら,ただちに代金を支払うことをせず,手形振出しを支払にかえることがある。この場合に,企業間信用が生じる。なぜなら売手の企業は,財貨・サービスを売り渡してから手形が落ちるまで買手の企業に信用を与えていることになるからである。売手の企業は代金分だけ売上債権(売掛金・受取手形)をもち,買手の企業は買入債務(買掛金・買入手形)をもつことになる(売掛債権,買掛債務)。売手企業は受け取った手形が満期になるまで待って代金を入手することもできるが,銀行に依頼して手形を割り引いてもらい,満期以前に代金を入手することもできる。後者の場合,買手企業への信用供給主体は売手企業から銀行に変更されることになる。これは企業間信用の銀行信用への転化である。一般に経済全体でみると(企業の政府・海外・家計への信用供給を無視して),売掛金・受取手形+受取手形割引=買掛金・支払手形という関係が成立する。
企業間信用は一般に短期の運転資金に関する信用であり,原則として長期設備資金に対応するものではない。その意味で,企業間信用は商業信用の一部をなしている。また,企業間信用は個人間貸借とともに,直接金融(直接金融・間接金融)の重要な一部分をなしている。さらに企業間信用は,その供与主体すなわち売手企業にとっては,販売拡大のための手段であり,販売拡大効果という正の収益のゆえに保有される企業の流動資産の一部をなす。これに対して信用を受け取る側すなわち買手の企業にとっては,短期的な資金調達の手段であって,銀行借入れ等の他の資金調達方法と代替的な関係にある。日本の高度成長期とくに昭和30年代では,財貨市場は一般に買手市場であり,企業間信用は企業の流動資産保有の重要な一形態であった。
執筆者:寺西 重郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
金融機関以外の事業会社相互間の商品・サービスの取引において現金による即時決済ではなく、掛売り、手形決済などの手段で買い手企業の代金支払いを一時的に繰り延べて一定期間後に代金の支払いが行われ、その間は企業相互間で信用が授受される金融取引。買い手企業にとって買掛金、支払手形の形をとり、売り手企業では売掛金、受取手形となる。売り手企業は金融機関より取引先について精度の高い信用情報や在庫処理能力、返済能力をもち、与信を通じて信用リスクは高いが大きな需要をもつ取引先への販売を拡大し、支払いの取引費用を削減しうる。大企業と比べて財務内容が脆弱(ぜいじゃく)で、株式や社債、コマーシャルペーパー(CP)などの発行による代替的な資金調達が非常に限られている中小企業にとって、金融機関借入れと並ぶきわめて重要な短期の資金調達方法であり、金融機関から円滑な借入れができない場合、代替的で有力な資金調達手段となる。金融機関借入れが少ない企業や手元流動性が低くて短期資金に余裕がない企業ほど多い。景気が悪化して資金不足になると手形の支払期限を長くする結果、増大していくから、景気の一つのバロメーターである。
中小企業では、売掛金と受取手形が総資産の約2割、流動資産の約4割を占め、買掛金と支払手形は短期借入金を上回って総債務の約2割となり、資金調達上欠かせない存在である。しかし、その割合は近年低下しており、総資産比で1991年(平成3)の22.7%から2005年に15.6%になった。内訳として買掛金の割合はほぼ横ばいで推移しているが、手形の交換金額と枚数の減少を反映して支払手形の割合が同時期に12.2%から5.7%にまで急落している。支払手形は信用力の向上や手形の事務処理負担の削減を目ざして、今後も減少する傾向にある。
[金子邦彦]
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