広義には外貨金融から円金融へ移行することを指すが,狭義には日本の貿易取引に係る金融,とくに輸入取引に係る外貨金融が円金融へ移行(シフト)することを意味している。
円シフトは,日本の輸入金融について金利裁定取引に関連した円の国際化という側面をもっている。日本の輸入業者は通常,外貨建てで貨物を輸入し,それが国内で販売されるまでの期間について主として,本邦所在の銀行や外国の銀行,あるいは輸出業者から外貨金融を受けている。こうした輸入取引に係る外貨金融を一般に輸入ユーザンスと呼ぶが,内外金融情勢の変化から国内借入金利が輸入ユーザンスに係る金利を下回るようになると,円シフトが生じる。また円シフトは,政策的配慮からも促進されることがある。
1969年初め,アメリカの金利が上昇して輸入ユーザンス金利が国内借入金利に比し割高となったが,国内では日本銀行によるポジション指導などのため円資金量が不足していたことから,外貨準備の急増を回避するための円シフト促進は制約されていた。そこで同年4月,為替銀行が国内でコール・マネーを取り入れ,為替銀行による輸入ユーザンスなどの原資であった外貨借入れを返済したときには,日銀のポジション指導が弾力的に運用され,円資金が供給された。
執筆者:河西 宏之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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