日本大百科全書(ニッポニカ) 「ユーザンス」の意味・わかりやすい解説
ユーザンス
ゆーざんす
usance
本来は、手形が一覧払いでなく、一覧後3か月とか4か月とか一定期間支払いの猶予を認められる場合に、その支払猶予期間をさす。このような手形を一覧払手形sight billに対して期限付手形usance billとよぶ。
しかし、今日ではその語義から転じて、支払猶予、支払繰延金融、または一定期間の信用の供与などの意味に用いられている。
貿易決済におけるユーザンスには、シッパーズ・ユーザンスshipper's usance、外銀ユーザンス、邦銀ユーザンスなどがある。シッパーズ・ユーザンスは、輸出業者(シッパー)が銀行を介在せずに直接輸入業者に信用を与え、一定期間代金の支払いを猶予するものである。外銀ユーザンスは、輸出業者が期限付手形を振り出す場合であって、手形が満期になるまでの金利は輸入業者が負担するが、手形は輸出地の外銀が買い取り、輸入業者にかわって外銀が輸出業者に代金を前払いする。つまり、支払猶予期間は外銀が輸入業者に対して信用を供与したことになる。邦銀ユーザンスは、輸出地の邦銀が外銀ユーザンスと同様の信用を輸入業者に対して供与することである。
なお、このほかに、かつては日銀ユーザンスというのがあった。これは、前記の各ユーザンスが不可能な場合、日本銀行が外国為替(かわせ)銀行へ貸し出すことによって、輸入業者の輸入手形決済を一定期間猶予させる制度であった。輸入業者はこの期間中に着荷を処分することができるので、支払いが容易になる。しかし、この日銀ユーザンスは、中央銀行信用であるだけに他のユーザンスとは異なって特殊なものであり、1954年(昭和29)に全廃されて輸入決済手形制度となったが、さらに66年以降はその取扱いも停止された。
[土屋六郎]