円建て外国為替のこと。実務的には、対外取引を円貨で決済する仕組みであり、国際金融論上は、円の国際化の代表的な実例といえる。
円為替による対外決済は、次のようになされる。たとえば、日本の輸出では、輸出業者が円建ての輸出手形を振り出し、それを本邦の外国為替銀行に買い取ってもらう。買取銀行は、ただちに自行に預けられている海外コルレス銀行の円預金勘定(コルレス勘定)からその金額を引き落とし、輸出手形を海外に送付する。受け取った海外コルレス銀行は、輸入業者にそれを提示し、輸入業者は自国通貨で円を買い、その円貨で輸入代金を決済するというものである。この円為替による対外決済の仕組みで重要なことは、決済は本邦の外国為替銀行に預けられている海外コルレス銀行の円預金勘定でなされること、円と外貨の交換(外国為替の取引)は海外でなされ、海外側が為替リスクを負うということである。
第二次世界大戦後の日本では、厳しい為替管理があり、円為替は使用することができなかった。しかし、1960年(昭和35)に非居住者自由円預金勘定が自由化され、海外の銀行が本邦外国為替銀行に円決済を行うためのコルレス勘定を開設できるようになったため、輸出入等の対外取引に円為替が導入されることになった。
ただし、対外取引で円貨による決済が求められる円為替は、為替リスクを相手側に転嫁できるため、日本側は有利であるが、一方的に決められるわけではない。対外取引における商慣習、彼我(ひが)のバーゲニング・パワー、円と外貨の受容性や金融の利便性などに左右される。過去に比べれば、円為替の使用(円建て輸出入比率=円の国際化の一つ)は増加したとはいえ、近年でも輸出で約40%、輸入で二十数%にとどまっている。主要先進国のなかでは、貿易において、日本はもっとも自国通貨建て貿易比率の低い国となっている。
[中條誠一]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…このように持高が偏る状態を総合してオープン・ポジションopen positionといい,この場合為替相場変動のリスクにさらされる。 円為替円建ての対外決済手段または決済の仕組みをいう。具体的には,国際間の債権・債務を決済するために用いられる円建ての輸出入手形や小切手などの決済手段,および非居住者円勘定を通じてこれらを決済する仕組みをいう。…
※「円為替」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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