地下千~3千メートルまで井戸を掘り、地下の熱源から噴出する高温の蒸気を吸い上げてタービンを回す発電方式。火山や地熱地域の分布から東北と九州に集中している。二酸化炭素(CO2)をほとんど排出せず、再生可能エネルギーに位置付けられる。天候に左右される太陽光や風力に比べ安定的に発電できる。日本は米国、インドネシアに次いで世界3位となる推定約2300万キロワットの地熱資源量を誇る。
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地中に掘削した坑井を通して地下に貯留されている地熱流体を噴出させ、その熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電方式をいう。
[湯原浩三]
普通は地熱流体のうち蒸気のみを利用して発電する天然蒸気発電方式が採用される。イタリアのラルデレロ(フィレンツェの南西約35キロメートル)、アメリカのガイザー(サンフランシスコの北約150キロメートル)、日本の松川(岩手県)のように乾いた蒸気の噴出する所はむしろ少なく、多くの場合水混じり蒸気が噴出するので、気水分離器(セパレーター)で蒸気を分離して使用する。タービンの型式としては、蒸気の中に非凝縮性のガスが多いときや小規模で一時的な発電のためには、排気を大気中に放出する背圧式タービンが用いられるが、普通は排気を復水器で凝縮させる復水タービンが用いられる。気水分離器で分離した熱水が高温多量であるときには、これを低圧蒸発(フラッシュ)させて発生した蒸気を混圧タービンの低圧段に入れて出力増加が図られる。これをフラッシュ発電といい、新しい地熱発電所にはこの型式が採用されているところが多い。復水器には直接接触式のジェットコンデンサーが採用され、それに用いる大量の水を冷却して再使用するための冷却塔が設置される。蒸気発電に対して熱水の熱エネルギーを利用して発電する熱水発電方式があるが、この方式の発電所はまだ例が少ない。
地熱発電用のタービンはタービン入口圧力がたかだか7キログラム程度の低圧タービンであるため火力発電用のタービンに比して大型となる。また、蒸気中に含まれている非凝縮性ガスを除去するためのガス抽出器も独特の設備である。
[湯原浩三]
地熱蒸気の噴出は比較的安定しており、発電所の保守、運転も比較的容易で、稼動率は90%前後と非常に高い。また新しい発電所では無人化が進められている。
地熱発電は1904年イタリアのラルデレロで始まり、第二次世界大戦後、世界各地で行われるようになった。とくに20世紀後半には石油代替エネルギーの一つとしてその開発が促進され、世界の地熱発電所の総設備容量は約870万8810キロワットに達しており、日本でも16発電所(設備容量は計54万6700キロワット)が運転している(2000)。外国の地熱発電所のなかではガイザー、ワイラケイ(ニュージーランド北島中央部タウポ)、ラルデレロが有名である。
地熱発電は原理的に燃料を必要としないので、燃料燃焼に伴う環境汚染はない。したがってクリーンエネルギーの一つとして位置づけられている。しかし、地熱井から噴出する非凝縮性ガスのなかには少量の硫化水素が含まれており、濃度は低く環境基準以下であれば問題はないが、大量に噴出する場合は脱硫装置が必要となる。また熱水中には微量のヒ素が含まれているため、熱水は全量地下還元されているが、経済的な脱ヒ素技術が確立されれば、熱水は貴重な低温熱エネルギー資源としてそのまま各種目的に利用することができる。地熱発電のコストは大部分地熱発電所の建設費と地熱井の掘削費であり、地熱資源の質と発電型式によっても違ってくるが、試算された値は、水力・火力・原子力など、ほかの発電方法と十分対抗できる経済性をもつものである。また火力や原子力に比べると発電所の規模は小さいが、それなりの経済性をもっている点が強みであり、小規模分散型のローカルエネルギー資源としての性格も備えている。
[湯原浩三]
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(槌屋治紀 システム技術研究所所長 / 2007年)
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