冷凍・空調機器工業(読み)れいとうくうちょうききこうぎょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「冷凍・空調機器工業」の意味・わかりやすい解説

冷凍・空調機器工業
れいとうくうちょうききこうぎょう

冷却技術を応用して「冷凍冷蔵」と「空気調和」を可能にする各種機器の開発・普及を通じて発展してきた工業。この工業が第二次世界大戦後、飛躍的に発展したのは、家庭用電気冷蔵庫、家庭用クーラー、カークーラーの急激な普及による。わが国の電気冷蔵庫の家庭への普及率は、1960年(昭和35)の5%から70年の90%、87年時点でほぼ100%に達し、機種の大型化・高品質化・高機能化が進んでいる。ルームエアコンの普及率は、70年の非農家7.3%(農家0.7%)から86年の非農家57.7%(農家27.7%)と伸び、最近ではヒートポンプ方式の冷暖房両用の機種も増加している。非農家保有率65.6%(農家83.1%)の乗用車過半にはカークーラーが装備されており、加えて、産業用コールドチェーンや産業用空調あるいはクリーンルーム発達などが、この工業をわずか30年間に急成長させた。家電・カークーラー大手と、従業員500人規模の圧縮機メーカーが中心となって、高水準の技術を保有し、世界各地への輸出を急増させている。

[殿村晋一]

用途ごとの機種

冷凍冷蔵の分野では、家庭用冷蔵庫のほか、食品流通用コールドチェーン機器(大規模低温貯蔵施設、輸送機械用冷凍冷蔵ユニット、冷凍冷蔵ショーケースなど)とサービス用機器(ウォータークーラー製氷機)があり、空調分野では、輸送機械用エアコン、住宅・店舗・事務所用ユニット型エアコン、大型ビル用セントラル空調設備用機器、産業用空調、クリーンルーム設備(半導体、医薬品関係)、特殊な温湿条件をつくりだす環境試験設備など多様である。

[殿村晋一]

冷凍・空調用圧縮機

現在、ほとんどの冷凍・空調機器は圧縮式冷凍サイクルを採用しており、圧縮機はその「心臓」部分である。圧縮機部分は関連機器中もっとも技術集的部門であり、その国際水準も高い。このため、単体での輸出も急増しており、1985年の生産総合数2910万台のうち、輸出は約1050万台に上っている。生産台数の内訳は、カーエアコン用が920万台(うち輸出270万台、以下同じ)、一般用0.4キロワット未満(電気冷蔵庫、小型ショーケース用)は1130万台(530万台)、0.4キロワット以上(ユニット型エアコンや業務用機器用)は860万台(250万台)で、技術開発力や生産技術の高さを考慮すると、今後とも生産拠点としての国際的地位はますます重要になるものと考えられる。

[殿村晋一]

冷凍冷蔵・空調機器

冷凍冷蔵関連の製品の生産は1985から86年において全体にほぼ横ばい状態である。各機種とも、機種の高品質化・高機能化を含めて「成熟商品」であり、今後とも安定した市場を形成していくものとみられる。空調機器の生産額は1兆6000億円(1985)で、冷凍・空調機器の大宗を占めている。数量的にはカーエアコンを中心とする輸送機械用エアコンが650万台(前年比14.4%増)で、内需が400万台弱、外需が250万台程度である。ユニット型エアコンは580万台余(前年比17.2%増)と著増したが、86年に入り、家庭用ヒートポンプ式や業務用エアコンの伸び悩みに加えて、円高による輸出の落ち込みも影響して、業績は全体に低迷ぎみである。

[殿村晋一]

今後の課題

技術的には、冷凍冷蔵面では、管理する物品により適合した機種の開発、空調面では、ヒートポンプによる冷暖房併用型に除湿・加湿・空気清浄・換気機能が一体化される必要がある。産業用空調では、電子工業、精密工業、生命工学の進歩に伴い、空気(および用水)の清浄度が製品の歩留りや品質に大きな影響を与えるようになり、超クリーンルーム(および超純水)お需要が急増しており、清浄度を高める、より高度な技術の開発が要求されている。経営面では、貿易摩擦を背景とする「国際化への対応」として、技術協力、現地生産、国際分業の推進も急展開するものとみられる。

[殿村晋一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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