日本大百科全書(ニッポニカ) 「ルームエアコン」の意味・わかりやすい解説
ルームエアコン
るーむえあこん
room air conditioner
室内の空気調和を行う装置。単にエアコンともいう。人間の活動にもっとも適した温度・湿度・気流分布に調節し、同時に空気中の塵埃(じんあい)を除く役目をする。近年は冷房だけでなく、除湿、暖房を含めて年間を通しての空気調和の役割を果たし、普及が目覚ましい。また、低騒音化、省エネルギー化が進み、エレクトロニクス技術の導入が積極的に行われている。原理は、冷凍機や冷蔵庫などと同様に、液体が気化するときの気化熱を利用したもので、冷媒には、低温でも気化しやすい液体を用い、一般にフロンが使われていた。しかし、フロンはオゾン層を破壊するため使用禁止となり、代替フロンのHFC(ハイドロフルオロカーボン)などが用いられるようになった。その代替フロンも温室効果をもたらすことが判明し、さらにノンフロン系の冷媒の開発が進められていて、ノンフロンのルームエアコンも登場している。
構造は、密封された鉄製の容器の中にモーターと圧縮機が直結され、モーターによって圧縮機を回して冷媒を圧縮し、高温・高圧にして凝縮器に送る。圧縮機には往復運動式(レシプロ式)とロータリー式とがあるが、最近は効率もよく、小型・軽量のロータリー式が多く使われている。凝縮器は銅パイプの表面にアルミニウムのフィンを取り付けたもので、高温・高圧の冷媒を放熱させ、気体から液体に冷却・液化する働きをする。毛細管は、凝縮器からの高圧の液状冷媒を、蒸発器で蒸発しやすいように圧力を下げて、低温・低圧の湿り気体(気体と液体とが混在した状態)にする装置で、内径1~2ミリメートル程度の細い銅パイプである。蒸発器の構造は凝縮器とほぼ同様で、圧縮された冷媒は凝縮器、毛細管を経てここで蒸発し、周囲から熱を奪う。したがって、蒸発器の表面に接触した空気の温度は下がり、空気中の水分は蒸発器の表面で露点以下となり、水滴となって除かれる。送風機関係は、能率よく熱交換を行わせるために強制的に空気を送る。
ルームエアコンには、ルームクーラーといわれる冷房専用型とヒートポンプ型(冷房・暖房兼用型)とがある。ヒートポンプ型の基本構造は、冷房専用タイプと変わりなく、蒸発器と凝縮器を逆にすれば、冷房が暖房となる。ヒートポンプ型の切り換え弁を四方弁という。ヒートポンプ型の特徴は、温度の低いところにある熱量を、温度を高めて使うことができる点にある。また、その際、消費した仕事(たとえば電力)より大きい熱量が得られる。電力をそのまま電熱として暖房するとすれば、1キロワット時で860キロカロリー毎時の熱量にしかならないが、成績係数3のヒートポンプを用いれば、3倍の2580キロカロリー毎時の熱量として利用できる。
据え付け方法には、本体が一体化されて窓や壁に取り付け、キャビネットの後部を室外に出し、凝縮器を外気により冷却するウィンド型と、部屋の内側に蒸発器と送風機を収めたユニットを置き、外側に圧縮機、凝縮器および送風機を収めたユニットを置いて、この間を冷媒を通すパイプで結んでいるセパレート型とがある。ウィンド型は、小容量機種が主で、縦方向に長い細幅タイプが多く、戸外に面した外壁や窓の構造がルームエアコンの重量に耐える場所に据え付ける。セパレート型は、室内ユニットを壁に掛ける壁掛けタイプ、床に置く床置きタイプ、天井から吊(つ)り下げる天井吊り下げタイプなどがある。セパレート型は圧縮機が室外ユニットにあるため、室内騒音が小さく、また、壁に冷媒配管と配線を通す小さな穴をあけるだけで取り付けられるので、現在ではルームエアコンの主流となっている。
[安藤正俊]