冷凍機(読み)レイトウキ(その他表記)refrigerating machine
refrigerator

デジタル大辞泉 「冷凍機」の意味・読み・例文・類語

れいとう‐き【冷凍機】

冷凍のための機械装置冷媒を循環させ、それが周囲から気化熱を奪うことを利用するなどして冷却する。

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精選版 日本国語大辞典 「冷凍機」の意味・読み・例文・類語

れいとう‐き【冷凍機】

  1. 〘 名詞 〙 低温をつくる機械装置。冷蔵庫製氷機、理化学実験用の低温装置、気体液化機などに用いる。〔近代科学の驚異(1934)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「冷凍機」の意味・わかりやすい解説

冷凍機 (れいとうき)
refrigerating machine
refrigerator

空間や物体を周囲よりも低い温度に冷却する作用(これを冷凍作用と呼ぶ)を行う装置。天然氷を保存して用いた記録は古くからあるが,機械式冷凍法が登場するのは熱力学の第2法則が確立される19世紀中ごろのことである。1834年J.パーキンスはエチルエーテルを用いる蒸気圧縮式冷凍機を発明したが,74年C.リンデはアンモニアを用いることによって効率のよい冷凍機を実現し,また1859年にはアンモニア吸収冷凍機がF.カレによって開発されている。現在冷凍機の利用は製氷,食品冷凍,冷房の分野にとどまらず,気体の液化,温湿度の調節,医学における低温利用など広い分野で利用されている。

冷凍作用は,低温物体から奪った熱をより高い温度の周囲に捨てることができてはじめて可能となり,この熱の授受のために用いられる作動流体を冷媒と呼ぶ。ところで,互いに接触する物体や流体の間では,熱は高温側から低温側に流れるのがつねであり,これは冷媒における熱の授受においてもあてはまることである。したがって冷媒が低温の物体から熱Q1を受け取るときにはその物体の温度よりもさらに低い温度でなければならず,一方,より高い温度の空間や物体に熱Q2を与えるときにはその空間や物体の温度よりもさらに高い温度でなければならない。熱の授受を行う冷媒をこのように変化させるためには,電力などのエネルギーを供給して圧縮するなど仕事Lを加える必要がある。このとき,Q1Q2Lの間には,Q2Q1Lの関係がある。

 冷凍機が冷却を目的とするのに対し,温度のより高い空間や物体に熱を与え加熱することを目的とする装置は熱ポンプと呼ばれる。冷凍機ではその目的からいって奪った熱が問題になるので,Q1/Lの比を成績係数εrと呼ぶ。一方,熱ポンプでは与えた熱が問題であり,その成績係数εhQ2/Lで定義される。温度T1(K)の熱源(熱容量の大きな空間や物体)から熱量Q1を奪って温度T2(K)(T1T2)の熱源に熱量Q2を与える冷凍機あるいは熱ポンプにおいて,成績係数が最大となる理想的サイクルは,断熱圧縮から始まって等温圧縮,断熱膨張,等温膨張を繰り返し,等温膨張の間に吸熱,等温圧縮の間に放熱を行う可逆的なサイクルである。このサイクルは,カルノーサイクルを逆方向に行わせたものであり,逆カルノーサイクルと呼ばれる。このときQ1/T1Q2/T2が成り立ち,εrおよびεhはそれぞれεrT1/(T2T1),εhT2/(T2T1)で与えられる。すなわち,冷凍機,熱ポンプともその成績係数はT2/T1の値が小さいほど大きくなることがわかる。

(1)蒸気圧縮式冷凍機 蒸気圧縮式冷凍機は空調用,工業用などに広く用いられている。その基本的な構成を図1-aに示す。冷媒は蒸発器を流れる間に被冷却流体から吸熱して蒸発し,圧縮機で圧縮されて温度,圧力が上昇する(断熱圧縮)。そして凝縮器で放熱して液化した後膨張弁で膨張して蒸発器に入る(膨張弁で膨張させるのは,断熱膨張を行わせるより簡単なためである)。図1-bはその基本的なサイクル(冷凍サイクルという)を,横軸に比エンタルピーh,縦軸に圧力pをとって示したもので,図中の数字は図1-aの数字と対応している。この図で,冷媒の単位量当りの冷凍効果はh1h4,圧縮仕事はh2h1であるから,εr=(h1h4)/(h2h1)となる。なお,冷媒が流れて冷房作用を行う装置も弁の切換えを行うことによって凝縮器による放熱を利用すれば熱ポンプとして暖房作用を行わせることができる。

(2)吸収冷凍機 吸収冷凍機の基本構成を図2に示す。この場合,アンモニア(冷媒)と水(吸収剤)の溶液や水(冷媒)と臭化リチウム(吸収剤)の溶液などが用いられる。蒸気発生器でこの溶液を加熱すると,沸点の低い冷媒が蒸発して凝縮器に流入し,ここで冷却されて液体になった後,蒸発器で吸熱(Q1)して冷凍作用を行い,蒸発器で放熱する。一方,冷媒濃度が薄くなった溶液は蒸発器から吸収器へ送られ,蒸発器からの冷媒を吸収した後にポンプで蒸気発生器へ戻される。吸収冷凍機では蒸気発生器で外部から加熱(Qg)を受けて動作するので,ポンプ仕事を無視すればQ1/Qgが成績係数となり,その値は冷房用ではおよそ0.75である。これに対し,蒸気発生器で発生する蒸気を,もう一つ別の蒸気発生器の加熱に用いる二重効用吸収冷凍機では,Q1/Qgの値は1程度になる。蒸気発生器の熱源には都市ガスの燃焼熱,高温蒸気のほか,各種の廃熱も利用される。

(3)蒸気噴射式冷凍機 冷媒に水を用い,その圧縮をエゼクターディフューザーによって行うもの。駆動用の蒸気をエゼクターのノズルから高速で噴出させて蒸発器内の蒸気を吸収し,両者の混合流をディフューザーを通して圧力,温度を上昇させた後,凝縮器で冷却して復水させる。冷媒である水が0℃で凍結するため,0℃以下の低温を得るのには向いていないが,装置には可動部分が少ないのが特徴である。

(4)空気冷凍サイクル 圧縮機で圧縮されて圧力,温度が高くなった空気を冷却した後,タービンで膨張させると低い温度の空気が得られる。このようなサイクルを空気冷凍サイクルといい,空調用にこの種の冷凍機を備えている航空機もある。

(5)その他 2本の異種金属をつないだ回路に直流を流すと,二つの接合部の一方では吸熱,他方では発熱する現象(ペルチエ効果)を利用する電子冷凍法(電子冷却)もある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「冷凍機」の意味・わかりやすい解説

冷凍機
れいとうき
refrigerating machine

物体から熱を奪って周囲の温度以下に冷却し(冷凍)、大気に熱を捨てる装置。冷却到達温度、冷却方法によって、蒸気圧縮式冷凍機、吸収式冷凍機、空気断熱式冷凍機、ジュール‐トムソン効果式冷凍機、スターリングサイクル冷凍機がある。

 原理的には熱機関の逆向きの運転で、低温物体の熱を仕事を加えて高温熱源に放出するもので、両熱源の温度差に対して低温物体の温度が高いほど効率がよく、この比を理論成績係数といい、冷凍機の効率の限界を示す。実際には小さな温度差で大量の熱を奪うためと、理論サイクルに近づけるために、高温・低温熱源(多くは空気と冷凍するもの)の温度近くで蒸発凝縮をおこす媒体(冷媒という)を用いる。通常用いられる冷媒は高分子化合物(おもにフッ素化合物)、アンモニア、エタン、プロパンなどであり、超低温(零下100℃以下)にするときは空気、窒素、メタン、ヘリウム、水素などの断熱膨張による冷却効果(ジュール‐トムソン効果)を用いる。

 蒸気圧縮式冷凍機は、冷凍する物体から蒸発器で熱をとり冷媒を蒸発させ、蒸発した冷媒を圧縮機で圧縮し、放熱器で熱を捨て液化する。液化した冷媒は膨張弁を通りふたたび蒸発器に入る。零下30℃程度(一段圧縮)から零下100℃程度(多段圧縮)の冷凍温度に用いられる。さらに低温度にするには、蒸発・凝縮の温度範囲の異なる2種類以上の冷媒を組み合わせて多段圧縮・膨張を行わせる多元冷凍サイクルを用い、零下150℃程度まで冷却できる。なお圧縮機は、電気モーターや、冷媒で冷凍する物体からとった熱以外に、外部から熱を加え、蒸気機関を動かして圧縮機を駆動するものもある。

 吸収式冷凍機は、冷媒を溶かした溶液をつくり、外から熱を加えて冷媒のみを蒸発させ、冷却して冷媒の液とし、薄い溶液と分離する。冷媒は蒸発器に送り、冷凍するものから熱を奪い蒸発させる。蒸気は薄い溶液に吸収させ元の濃度の溶液に戻す。溶液はふたたび加熱部に送る。簡単な吸収式冷凍機はガス冷蔵庫で、溶液、冷媒の循環には圧力差を利用している。大型の冷凍機では溶液を加熱部に戻す際などにポンプを用いている。零下100℃程度まで冷凍できる。

 零下150℃以下に冷却するときは、断熱膨張による冷却効果を利用する。空気などを急速に膨張させると温度が低下し、これを数回繰り返せばどんどん温度が低下する。極低温を必要とするときは不純物の少ないヘリウムを用いて繰り返し断熱膨張させることによって零下270℃程度まで冷却できる。この方法では冷却の限界は空気、ヘリウムなどが液化する温度である。

 冷蔵庫、冷凍庫で多く使用されているのは蒸気圧縮式冷凍機、吸収式冷凍機で、これらは冷却のほかに除湿機としても利用される。空気などの断熱膨張を利用するものは一般にはあまり利用されていない。また小さな電子機器の冷却に熱電効果を利用した電子冷凍が用いられることもある。

 また低温の廃熱を利用するなどのために、吸着冷凍が研究され始めている。吸着冷凍は低温で冷媒を蒸発させるために蒸発器で蒸発した冷媒を吸着剤で吸着して圧力を下げ、低温での蒸発を促進するもので、吸着した冷媒は吸着材を低温廃熱で加熱して分離させ、凝縮器で冷却・凝縮して液に戻し蒸発器に送る。吸着剤を二つ用意すれば、冷却・加熱を交互に切り換えて連続的に冷媒の蒸発・凝縮ができる。

[吉田正武]


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百科事典マイペディア 「冷凍機」の意味・わかりやすい解説

冷凍機【れいとうき】

空間や物体を周囲よりも低い温度に冷却するために用いられる装置。低温の物体から奪った熱を,より温度の高い物体に与えることによって行われ,この熱の授受のために用いられる作動流体を冷媒と呼ぶ。最も広く使われる圧縮式の冷凍機では,冷媒は蒸発器を流れる間に被冷却流体から熱を奪って蒸発し,圧縮機で圧縮されて圧力・温度が上がり,凝縮器で熱を捨てて液化した後,膨張弁を通って膨張し蒸発器に戻る。この圧縮・凝縮・膨張・気化の循環的変化を冷凍サイクルという。圧縮式のほか,アンモニアなどの冷媒蒸気を溶液に吸収させ,加熱により濃厚蒸気を放出させて凝縮器に送り,冷却によって液体としてから蒸発器で吸熱を行わせる吸収式,水を冷媒としてその圧縮を蒸気エゼクターで行う蒸気噴射式などもある。冷凍機の応用は冷蔵庫,空気調和装置,製氷装置,冷凍倉庫などきわめて広い。
→関連項目COP冷凍

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栄養・生化学辞典 「冷凍機」の解説

冷凍機

 フリーザー.食品などを凍結するまで低温にするための装置.

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