分木(読み)ぶんぎ

精選版 日本国語大辞典 「分木」の意味・読み・例文・類語

ぶん‐ぎ【分木】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 境界に立てる杭。〔書言字考節用集(1717)〕
  3. 一本水路から用水二つ区域に分けるため、分水点に立てた目盛木。
  4. 昔、円を描く道具(=ぶんまわし)に用いた木柱。コンパスの脚に用いた木。
    1. [初出の実例]「工が、まんまるに分まはしをするには、分木(フンキ)をもまはさずしてそらに分まわしをすれども」(出典:清原国賢書写本荘子抄(1530)三)

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改訂新版 世界大百科事典 「分木」の意味・わかりやすい解説

分木 (ぶんぎ)

1本の水路から,用水を二つの区域や村に分ける際にとられる技術的手段の一種で,分水点に目盛木を立て,その高さによって分水を行うのが分木である。例として滋賀県長浜市の旧浅井町相撲庭(すまいにわ)の姉川北岸に取入口をもつ〈大井〉の井口に打つ分木がある。〈大井〉取入口の対岸には,大井組の加入村の相撲庭,野村三田村の3ヵ村よりも強大な郷里ごうり)荘を灌漑する〈横井〉があって相対立し,中世を通じてしばしば水論を惹起していた。天文年間(1532-55)に至って浅井氏が江北を制するようになってから大井組はその保護を得,郷里荘側と交渉の末,干ばつに際して,より上流に堰をもつ〈出雲井〉を年に3度切り落として特別に下流部の郷里荘を救う,いわゆる〈三度水〉を下すことになった。その際,三度水の流下直前の姉川表の自然の流水量を,郷里荘側に奪われずに大井組の水路に取り入れるべく,双方役人立会いのうえで,〈分木打〉を行った。〈三度水〉の下る際には,郷里荘側の取入口〈横井〉上流の諸堰が皆取り払われるが,姉川表の自然流水だけは〈大井〉に引き込むことができるという。分木の示す水深,出雲井からの三度水による増水量を測り,大井の引水権の保証とした。この分木は姉川の〈河原表井口〉の例である。
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