デジタル大辞泉
「一本」の意味・読み・例文・類語
いっ‐ぽん【一本】
1 細長い物一つ。また、電話・手紙などについてもいう。「一本の便りもない」→本
2
㋐一冊または一部の書物。
㋑ある書物。異本。別の本。「一本に曰く」
3 柔道・剣道などで、完全に技が一つ決まること。柔道では投げ技のほか、押さえ込みで20秒が経過した場合、絞め技や関節技で相手が「参った」と言った場合など。
4 《3から転じて》相手をやり込めること。「これは一本取られたな」
5 (名詞に付いて)そのことだけに、目標や態度などを絞ること。いっぽんやり。「芸一本に生きる」「進学一本にしぼる」
6 それ一つだけで独立しうる状態であること。特に、一人前になった芸者。→半玉
7 とっくりに入った酒。「一本つける」
8 銭100枚をつないだ銭差一つ。一文銭で100文、四文銭で400文。
「―づつも取らねば勘定に合ふもんぢゃあねえ」〈黄・即席耳学問〉
9 同じ仲間。一味。ぐる。
「おのれが弟の伝三郎、今迄おのれら―と思ひしに」〈浄・卯月の紅葉〉
[アクセント]1・3~8はイッポン、2はイッポン。
ひと‐もと【一本】
草や木などのいっぽん。また、一つだけ離れて立っている草や木など。「一本松」
「滑なる床には、―の草だに生いず」〈鴎外訳・即興詩人〉
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いっ‐ぽん【一本】
〘名〙
① 書物についていう。
(イ) 書物の一冊、一巻。一部の書物。
※
今昔(1120頃か)七「曇摩伽陀耶舎
(どんまかだやしゃ)に値
(あひ)て无量義経を伝へむと思ふ。心を至して此を請
(うく)るに、纔
(わづか)に一本を得たり」 〔王建‐哭孟東野詩〕
(ロ) 一つの書物。ある書物。異本が多くある場合などにいう。一書。
※
万葉(8C後)三・二五五「天離る夷の長道ゆ恋ひ来れば
明石の門より大和島見ゆ 一本云、やどのあたり見ゆ」
② 木、扇、竹、髪の毛、針、刀、壜(びん)など、細長い物一つ。
※九暦‐九条殿記・五月節・天慶七年(944)五月「寄柱今日以前左右馬寮堀立各一本」
※
読本・夢想兵衛胡蝶物語(1810)前「一本の松魚
(かつを)は食ひつくされず」 〔淮南子‐説林訓〕
③ ばらばらになっているものをまとめた、ひとまとまり。また、他の要素を交えない、一つの物事や方向。
④ 同じ仲間。一味。ぐる。
※
浄瑠璃・卯月の
紅葉(1706頃)上「をのれが弟の伝三郎、今迄をのれら一本と思ひしに」
⑤ それ一つだけで独立しうる状態にあること。
一本立ち。
(イ) 他の助けを借りずに
独力で事が行なえること。
※浄瑠璃・源頼家源実朝鎌倉三代記(1781)八「此庵地を一本(いッぽン)の寺にしたいと思ふから」
(ロ) 特に、一人前になった芸者。一本立ち。⇔
半玉。
※
当世書生気質(1885‐86)〈
坪内逍遙〉四「二代目小常と名宣
(なの)らせ、大妓
(イッポン)として押出せしに」
⑥ 江戸時代以後の金銭の簡便な単位。
(イ) 一文銭または四文銭をつないだ銭差し一本の意で、百文または四百文のこと。
※洒落本・通言総籬(1787)二「さよじさんに一本(ぽン)かりてたて引きをしてあげてやったに」
※歌舞伎・傾情吾嬬鑑(1788)五立「『酒手もろともソレ一本』と四文銭を一本出してやる」
(ロ) 転じて、百両のこと。
※南水漫遊拾遺(1820頃)四「歌舞伎楽屋通言〈略〉壱本金百両」
(ハ) 明治以後、百円、千円、一万円などをいう
隠語。〔隠語輯覧(1915)〕
※
落語・三軒長屋(1894)〈四代目橘家円喬〉「マア諸雑費を引いて、跡
(あと)百円
(イッポン)も残りゃア」
⑦ 剣道や柔道で一回の勝負。また、わざが一つきまること。転じて、相手をやりこめること。「一本とる」
⑧ その道ひとすじ。いっぽんやり。「文筆一本の
生活」
ひと‐もと【一本】
〘名〙
① 木や草などの一本
(いっぽん)。一株。また、
器具などの一基
(いっき)。
※
古事記(712)中・歌謡「みつみつし
久米の子らが 粟生
(あはふ)には 臭韮
(かみら)比登母登
(ヒトモト) 其ねが本 其根芽つなぎて 撃ちてし止まむ」
② 鷹などの猛禽一羽。〔いろは字(1559)〕
※仮名草子・浮世物語(1665頃)三「鷹一もとに侍一人を代へられん事」
③ 酒になり始めた時のある量の米と麹(こうじ)の数え方(日葡辞書(1603‐04))。
④ (接頭語のように用いて) 木や草が一本だけ離れて立っていることをいう。
※古事記(712)下・歌謡「八田の 比登母登(ヒトモト)須宜(すげ)は 子持たず 立ちか荒れなむ あたら菅原」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例