一本(読み)イッポン

デジタル大辞泉 「一本」の意味・読み・例文・類語

いっ‐ぽん【一本】

細長い物一つ。また、電話・手紙などについてもいう。「一本の便りもない」→ほん

㋐一冊または一部の書物
㋑ある書物。異本。別の本。「一本いわく」
柔道剣道などで、完全に技が一つ決まること。柔道では投げ技のほか、押さえ込みで20秒が経過した場合、絞め技関節技で相手が「参った」と言った場合など。
3から転じて》相手をやり込めること。「これは一本取られたな」
名詞に付いて)そのことだけに、目標や態度などを絞ること。いっぽんやり。「芸一本に生きる」「進学一本にしぼる」
それ一つだけで独立しうる状態であること。特に、一人前になった芸者。→半玉はんぎょく
とっくりに入った酒。「一本つける」
銭100枚をつないだ銭差ぜにさし一つ。一文銭で100文、四文銭で400文。
「―づつも取らねば勘定に合ふもんぢゃあねえ」〈黄・即席耳学問〉
同じ仲間。一味。ぐる。
「おのれが弟の伝三郎、今迄おのれら―と思ひしに」〈浄・卯月の紅葉
アクセント138ッポン、2はイッポン

ひと‐もと【一本】

草や木などのいっぽん。また、一つだけ離れて立っている草や木など。「一本松」
なめらかなる床には、―の草だに生いず」〈鴎外訳・即興詩人

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「一本」の意味・読み・例文・類語

いっ‐ぽん【一本】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 書物についていう。
    1. (イ) 書物の一冊、一巻。一部の書物。
      1. [初出の実例]「曇摩伽陀耶舎(どんまかだやしゃ)に値(あひ)て无量義経を伝へむと思ふ。心を至して此を請(うく)るに、纔(わづか)に一本を得たり」(出典:今昔物語集(1120頃か)七)
      2. [その他の文献]〔王建‐哭孟東野詩〕
    2. (ロ) 一つの書物。ある書物。異本が多くある場合などにいう。一書。
      1. [初出の実例]「天離る夷の長道ゆ恋ひ来れば明石の門より大和島見ゆ 一本云、やどのあたり見ゆ」(出典:万葉集(8C後)三・二五五)
  3. 木、扇、竹、髪の毛、針、刀、壜(びん)など、細長い物一つ。
    1. [初出の実例]「寄柱今日以前左右馬寮堀立各一本」(出典:九暦‐九条殿記・五月節・天慶七年(944)五月)
    2. 「一本の松魚(かつを)は食ひつくされず」(出典:読本・夢想兵衛胡蝶物語(1810)前)
    3. [その他の文献]〔淮南子‐説林訓〕
  4. ばらばらになっているものをまとめた、ひとまとまり。また、他の要素を交えない、一つの物事や方向。
  5. 同じ仲間。一味。ぐる。
    1. [初出の実例]「をのれが弟の伝三郎、今迄をのれら一本と思ひしに」(出典:浄瑠璃・卯月の紅葉(1706頃)上)
  6. それ一つだけで独立しうる状態にあること。一本立ち
    1. (イ) 他の助けを借りずに独力で事が行なえること。
      1. [初出の実例]「此庵地を一本(いッぽン)の寺にしたいと思ふから」(出典:浄瑠璃・源頼家源実朝鎌倉三代記(1781)八)
    2. (ロ) 特に、一人前になった芸者。一本立ち。⇔半玉
      1. [初出の実例]「二代目小常と名宣(なの)らせ、大妓(イッポン)として押出せしに」(出典:当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉四)
  7. 江戸時代以後の金銭の簡便な単位。
    1. (イ) 一文銭または四文銭をつないだ銭差し一本の意で、百文または四百文のこと。
      1. [初出の実例]「さよじさんに一本(ぽン)かりてたて引きをしてあげてやったに」(出典:洒落本・通言総籬(1787)二)
      2. 「『酒手もろともソレ一本』と四文銭を一本出してやる」(出典:歌舞伎・傾情吾嬬鑑(1788)五立)
    2. (ロ) 転じて、百両のこと。
      1. [初出の実例]「歌舞伎楽屋通言〈略〉壱本金百両」(出典:南水漫遊拾遺(1820頃)四)
    3. (ハ) 明治以後、百円、千円、一万円などをいう隠語。〔隠語輯覧(1915)〕
      1. [初出の実例]「マア諸雑費を引いて、跡(あと)百円(イッポン)も残りゃア」(出典:落語・三軒長屋(1894)〈四代目橘家円喬〉)
  8. 剣道や柔道で一回の勝負。また、わざが一つきまること。転じて、相手をやりこめること。「一本とる」
    1. [初出の実例]「かやうの男は大かた女房の方から一本しられてをきざりにあふもの也」(出典:浮世草子・好色万金丹(1694)三)
  9. その道ひとすじ。いっぽんやり。「文筆一本の生活」
  10. いっぽんぐま(一本隈)」の略。

ひと‐もと【一本】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 木や草などの一本(いっぽん)。一株。また、器具などの一基(いっき)
    1. [初出の実例]「みつみつし 久米の子らが 粟生(あはふ)には 臭韮(かみら)比登母登(ヒトモト) 其ねが本 其根芽つなぎて 撃ちてし止まむ」(出典:古事記(712)中・歌謡)
  3. 鷹などの猛禽一羽。〔いろは字(1559)〕
    1. [初出の実例]「鷹一もとに侍一人を代へられん事」(出典:仮名草子・浮世物語(1665頃)三)
  4. 酒になり始めた時のある量の米と麹(こうじ)の数え方(日葡辞書(1603‐04))。
  5. ( 接頭語のように用いて ) 木や草が一本だけ離れて立っていることをいう。
    1. [初出の実例]「八田の 比登母登(ヒトモト)須宜(すげ)は 子持たず 立ちか荒れなむ あたら菅原」(出典:古事記(712)下・歌謡)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「一本」の解説

一本 いっぽん

相生治五右衛門(あいおい-じごえもん)

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の一本の言及

【柔道】より

…抑込み技の宣告がなされた場合も,どちらか一方の身体の一部でも場内にふれているときは抑込みが継続しているとみなす。(5)勝負 試合は投げ技か,固め技によって勝負が決められ,どちらかが〈一本〉をとれば試合が終了する。また試合時間内に勝負が決まらなかった場合は,判定により優勢勝ちか引分けになる。…

※「一本」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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