刑事司法改革関連法(読み)けいじしほうかいかくかんれんほう

知恵蔵 「刑事司法改革関連法」の解説

刑事司法改革関連法

取り調べの可視化や、司法取引の導入、通信傍受の対象犯罪の拡大などを柱とする、刑事司法制度の改革を目指す法律。これに関する刑事訴訟法の一部改正など関連する三つの法案が2015年8月に衆議院を通過、秋の臨時国会での成立を目指している。今後の捜査や裁判のあり方を大きく変えるものとして注目されている。
刑事司法制度の見直しが強く求められたきっかけは、大阪地検特捜部が改竄(かいざん)した証拠で厚生労働省の局長を起訴した事件。押収したデータの日付を書き換えるという杜撰(ずさん)な捏造(ねつぞう)ではあったが、これを知りながら検察が組織ぐるみで加担していたことが10年に発覚。犯行を行った検事実刑に服したり検事総長辞任に追い込まれたりという大きな問題になった。こうしたことの再発を防ぐとして改革の機運が高まり、法制審議会答申を踏まえて政府が法案を提出した。内容は、警察や検察の取り調べの録音録画を一部の事件で義務付けること(可視化)、他人の犯罪を明かすことを引き換えに自らの罪を軽くする司法取引の新たな導入、これまで重大な組織犯罪についてだけ認められていた通信傍受の対象が拡大され第三者の立ち合いなしに盗聴できるなどが盛り込まれている。本来の法整備の目的が冤罪(えんざい)防止であったのに、可視化の対象事件は大幅に限定され、でっち上げが多いといわれる痴漢事件などは含まれない。その一方で、苦し紛れに他人にぬれぎぬを着せがちとされる司法取引の導入や、第三者の目を逃れたノーチェックの盗聴容認など、捜査の都合と便宜を優先するものになってはいないかとの批判も強い。これではむしろ冤罪の懸念が募るとして、原点に立ち返り捜査が適正に行われているか監視する体制や、捜査当局の暴走を防ぐ仕組み作りを求める声も上がっている。

(金谷俊秀 ライター/2015年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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