初唐四傑(読み)しょとうしけつ

改訂新版 世界大百科事典 「初唐四傑」の意味・わかりやすい解説

初唐四傑 (しょとうしけつ)

中国,唐の則天武后の時代のすぐれた詩人4人,王勃おうぼつ)(649-676),楊炯ようけい)(650-695?),盧照鄰(ろしようりん)(637-689),駱賓王(らくひんのう)(640?-684?)をいう。略して王楊盧駱ともいう。この呼称は彼らの生存時からすでにあったと思われる。唐の詩が南朝の余習を脱して,新しい詩風を確立した初期の貢献者とされる。王勃と楊炯は,ことに五言律詩の形式を完成するのに尽力した。線の太さはないが,新鮮な感覚が表出されている。王勃の詩文集は奈良朝に日本に到来して愛読され,古写本が今なお伝わる。盧照鄰と駱賓王の詩は,七言歌行と呼ばれる長編の七言詩に特色があり,盧照鄰の〈長安古意〉,駱賓王の〈帝京篇(ていけいへん)〉はとりわけ有名である。4人はともに前代では文学の後進地域だった北方の出身者で,また従来の文学のにない手だった貴族の出ではなく,二流以下の士族に属していた。そうした要因も新しい詩を生む素地になっていたであろう。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「初唐四傑」の意味・わかりやすい解説

初唐四傑
しょとうしけつ

中国、初唐期に活躍した王勃(おうぼつ)、楊炯(ようけい)、盧照鄰(ろしょうりん)、駱賓王(らくひんのう)の4人の詩人をいう。「王楊盧駱」ともよび、ともに高宗(在位649~683)の治世年間に名が出て、当時すでに「四傑」の呼称があったと思われる。いずれも政界ではさほど出世できず不遇の一生を終えているが、その作品は、六朝(りくちょう)風の華麗な表現を残しながらも、題材情感の新鮮さによって人々の賞賛を受けた。とくに送別や寄贈の作、また詠物(えいぶつ)の詩には、六朝詩に希薄な個性と時代性の反映が認められ、形式面でも近体詩の律詩形式を用いた作品が少なくないなど、次の盛唐期の詩風を切り開く先駆的な役割を果たした。とりわけ王勃に優れた作品が多く、四傑の代表と目されている。

[佐藤 保]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「初唐四傑」の意味・わかりやすい解説

初唐四傑
しょとうしけつ
Chu-tang si-jie

中国,初唐の詩人,王勃 (おうぼつ) ,楊炯 (ようけい) ,盧照鄰 (ろしょうりん) ,駱賓王 (らくひんのう) の4人をいう。その姓をとって「王楊盧駱」とも並称する。高宗から則天武后の時代にかけて,従来の南朝風の発想や表現から脱した清新な抒情の詩風の代表者たち。ともにあまり出世せず,不幸な運命をたどった。

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