剣先船(読み)ケンサキブネ

デジタル大辞泉 「剣先船」の意味・読み・例文・類語

けんさき‐ぶね【剣先船】

船首剣先のようにとがっている船。ふつう長さ約13メートル。江戸時代奈良大坂付近の浅い川で荷物運送に従っていた。けんさき。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「剣先船」の意味・読み・例文・類語

けんさき‐ぶね【剣先船・劒鋒舟】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「けんざきぶね」とも ) 大坂、大和川水域で、近世初頭以後使用された川船。大和川は大和、河内摂津の重要交通路で、河内平野を北流して淀川に合流していたが、近世初期、その川底が浅くなり、上荷船の運航が困難になったため、浅い喫水の船が要求されて出現したもの。舳先を剣先のようにとがらせた細長く平たい船型(長さ四五尺余、深さ一・四尺)なのでこの名がある。正保三年(一六四六)上荷船茶船仲間が幕府から許可された二一一艘を古剣先船、延宝三年(一六七五)大坂の尼崎安清が許可された同人所有の一〇〇艘を新剣先船、また貞享三年(一六八六)大和川沿岸の村民が許可された七八艘を在郷剣先船と称し、合計三八九艘が就航して大和川流域の商品流通に大きな役割を果たした。宝永年間(一七〇四‐一一)に、大和川が大坂湾に直に注ぐように改修されたあとも用いられた。けんさき。
    1. 剣先船〈上 側面 下 平面〉
      剣先船〈上 側面 下 平面〉
    2. [初出の実例]「月や実剣先船のみつかしら〈玖也〉」(出典:俳諧・桜川(1674)秋一)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「剣先船」の意味・わかりやすい解説

剣先船 (けんさきぶね)

近世,大和川筋を航行した川船。享保年間(1716-36)には古剣先船211艘,新剣先船100艘,在郷剣先船78艘,古大和川筋井路川船100艘,計489艘があり,働き場は上流は大和・河内境の亀ノ瀬と支流石川の富田林から,下流の大坂京橋までとされた。干鰯(ほしか),油粕その他諸貨物で米,大豆などの俵物は積まない定めであった。元禄末年(1700年代)大坂川船との紛議が起こり,大和川付替え後はそちらに働き場を移し,旧大和川筋は衰えていった。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「剣先船」の意味・わかりやすい解説

剣先船【けんさきぶね】

江戸時代,河内国大和(やまと)川水系の水運に従事した川船。名称は船首がとがった船の形からつけられ,古剣先船(古船)・新剣先船(新船)・井路川(いじかわ)剣先船(井路川船)・在郷剣先船(在船)の4種があった。古船と新船は水系全体に広く賃積稼ぎを営み,在船と井路川船は年貢米輸送や村方荷物の賃積稼ぎに従事していた。江戸中期の船数は古船211,新船100,在船78,井路川船100の計489艘。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

ドクターイエロー

《〈和〉doctor+yellow》新幹線の区間を走行しながら線路状態などを点検する車両。監視カメラやレーザー式センサーを備え、時速250キロ以上で走行することができる。名称は、車体が黄色(イエロー)...

ドクターイエローの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android